合筆(ごうひつ/がっぴつ)とは、互いに接する複数の土地を一筆の土地にまとめることをいいます。

(土地は「筆」という単位が使われていて、「一筆(いっぴつ)」「二筆(にひつ)」と数えます。これは昔、豊臣秀吉が行った太閤検地の際に土地の情報を筆で一行に書き記したことが由来だそうです)

土地は、分筆(ぶんぴつ)といって細かく分けることが可能ですが、その逆で、二筆以上の土地をまとめて一筆にすることもできるのです。
それが合筆登記です。

土地の管理や売買をするときに「合筆」ってワードが出てきたけど、なんのことだかわからない…なんて経験がある人も多いと思います。

このコラムでは、合筆や合筆登記について詳しく解説していきます。

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合筆とは?合筆登記はどんなときに必要?

冒頭でお伝えした通り、合筆とは複数の土地を一筆の土地にまとめることです。

そして合筆登記とは、複数の土地を1つにする場合に行う登記のことで、土地を管轄する法務局で登記申請を行います。

以下のような方には、合筆登記をオススメします。

  • 隣接する複数の土地を所有しているが、管理が大変
  • 不整形な複数の土地をきれいに区画し直したい
  • それぞれの土地の境界が曖昧
  • 相続のために相続人の数に合わせて分筆し直したい

ではなぜ上記のような場合は土地をまとめる必要があるのでしょうか。

合筆登記をするメリットを詳しく見ていくことにしましょう。

合筆登記をするメリットとは?

合筆登記をするメリットとして、以下の2つがあります。

  • 土地の売却がスムーズになる
  • 土地の価値が上がる

合筆登記をする一番大きな理由は、土地が複数あると管理が大変だからです。

見た目は広い一つの土地であっても、登記記録上は何筆にも分かれているということはよくあります。

ではなぜ分筆登記をすると売却がスムーズになり、土地の価値があるのでしょうか。

土地の売却がスムーズになる

複数の土地を売却しようとすれば、土地の数だけ手間が増えることになります。

売買契約や所有権の移転登記は一筆の土地ごとに行わなければなりませんし、登記記録や図面などの書類も一筆ずつ取得する必要があります。

作業が煩雑ですし、費用もかさみます。

そうした不便さを防ぐために、土地を一つにまとめておくのです。

土地の価値が上がる

合筆登記は、不整形な土地を整形するために行われる場合もあります。

一つ一つの土地の形が利用しづらい土地は、まとめて大きな一筆の土地にし、使いやすい形で改めて分筆(ぶんぴつ)すれば、価値の高い土地に生まれ変わるというわけです。

合筆できない場合とは?

しかし、どんな土地でも合筆ができるわけではありません。

以下の場合は合筆できないことになっています。

  • 相互に接続していない土地の合筆
  • 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆
  • 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆
  • 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記
  • 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆
  • 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆

詳しく見ていきましょう。

1. 相互に接続していない土地の合筆

合筆する土地は、必ず相互に「線」で接している必要があります。

離れていたり、「点」でしか接していない土地同士は合筆することができません。

2. 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆

地目とは、登記記録に記載されている土地の用途の分類のことです。

住宅が建っている土地の地目は宅地ですし、農作物を育てている土地の地目は畑となります。

合筆するには地目が同一でなければなりません。

また、A市B町の土地と、A市C町の土地では、地番区域が異なるため合筆することはできません。(「丁目」で地番を区切っている場合は、丁目をまたがる土地は合筆できません)

3. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆

合筆する複数の土地は、当然のことながら全て所有者が同じでなければなりません。

他人の土地までくっつけてしまうことはできませんからね。

なお、登記記録は表題部と権利部の2つに分かれています。

表題部のみで権利部がない場合の所有者のことは「表題部所有者」といいます。

権利部がある場合の所有者は「所有権の登記名義人」といいます。

表題部所有者同士が同一人であること、もしくは所有権の登記名義人同士が同一人であることが必要になるわけです。

4. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記

土地が共有だった場合で、土地によって持分が異なる場合は合筆できません。

例えばAさんとBさんが共有する甲土地と乙土地があったとして、甲土地の持分はA:B=5:5で、乙土地の持分はA:B=6:4だった場合は、甲土地と乙土地は合筆できないことになります。

5. 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆

先ほど3で「表題部所有者」と「所有権の登記名義人」について触れましたが、合筆するためには、これらが組み合わさっていてはいけません。

つまり、一方の土地は所有権の登記がなく(表題部所有者で)、もう一方の土地は所有権の登記がある(所有権の登記名義人である)場合は、合筆できません。

たとえ同一人物であったとしても、登記記録上の記載も同じでなければならないのです。

6. 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆

権利部がある土地の場合、所有権以外の権利に関する登記があれば、原則として合筆できません。

たとえば一方の土地だけに抵当権の登記があったり、それぞれ別の抵当権が設定されているような場合は合筆できないことになります。
(ただし、一部例外的に認められる場合があります)

合筆登記は共有者の一人からでも申請できる?

もし土地が共有であった場合、合筆登記を申請するには共有者全員で行わなければなりません。

AさんとBさんの共有なら、Aさん単独で申請することはできず、AさんとBさんで申請する必要があります。

まとめ

合筆と合筆登記について、ご理解いただけたでしょうか。
このコラムをまとめると、以下の通りになります。

  • 合筆とは、複数の土地を一筆の土地にまとめること
  • 合筆登記とは、複数の土地を1つにする場合に行う登記のこと
  • 合筆登記をすると、土地の売却がスムーズになり、場合によっては土地の価値も上がる
  • ただし合筆できない場合もあるので注意する
  • 合筆登記は土地の共有者全員でする必要がある

合筆で土地を1つにまとめれば、土地の価値が上がり売却がスムーズになるケースもあります。

合筆を検討している方は、土地家屋調査士などの専門家に合筆登記の依頼をするのがおすすめです。

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この記事の監修者 中里ユタカ講師

中里 ユタカ講師

宅建士試験・行政書士試験・測量士補、土地家屋調査士試験にすべてストレートで合格。

まったくの初学者から、中山講師の講義を受けて8ヶ月で土地家屋調査士試験に合格。(択一13位、総合29位)

自らの受験経験で培った短期合格のためのテクニックを提供している。

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