土地家屋調査士の年収って、いくらぐらいだと思いますか?

また、年齢や労働形態による違い、エリアによる違いってあるのでしょうか?

このコラムでは、土地家屋調査士の平均年収、年齢、労働形態やエリアによる違いを説明し、どのようにすれば年収が上がるかを考えていきます。

このコラムを通じて、土地家屋調査士の年収について知っていただければ幸いです。

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土地家屋調査士の平均年収は?1000万超える?2000万は?

土地家屋調査士の平均年収は一般的に600万円前後といわれています。

会社勤務の場合は年収400~600万円、独立開業する場合は1000万以上の年収を得ている人も多いです。業務を拡大すれば、年収2000万円を超えることも可能でしょう。

なお、令和5年分賃金構造基本統計調査によると測量技術者の平均年収は約466万円(所定内給与額309.1千円*12+年間賞与その他特別給与額948.9千円)となっています。但し、この値は測量技術者に関するものであり、土地家屋調査士以外も含まれていることに留意が必要です。

令和4年分の国税庁『民間給与実態調査』によるとサラリーマンの平均年収が458万円なので、土地家屋調査士の年収はサラリーマンより相当高いといえるでしょう。

この理由として、土地家屋調査士の業務が独占業務であり、参入障壁が高いことが考えられます。

土地家屋調査士の業務は、不動産の測量をして土地の地積の登記を申請したり、土地や建物を活用目的に応じて分けたりくっつけたりする「表題部の登記」の申請をすることです。

この業務は専門性が高く、誰でもできてしまうと依頼者の権利などを損なうおそれがあるので、土地家屋調査士だけの独占業務となっています。

そして、このような独占業務によって参入へのハードルは高くなるため、土地家屋調査士の年収が高くなっていると考えられます。

なお、こうした年収は年齢や勤務形態、勤務エリアによっても異なってきます。以下では主に

  • 年齢別の年収
  • 補助者、独立開業、会社勤務の年収
  • エリア別の年収

についてより詳細に見ていきます。

関連コラム:土地家屋調査士とは?資格の基本情報と仕事内容

年齢別の年収

年代年収(目安)
20代500万円前後
30代600万円前後
40代750万円前後
50代850万円前後
60代以上600万円前後

地域等によっても差はありますが、一般的な目安としては、20代で500万円前後、30代で600万円前後、40代で750万円前後、そして50代では850万円前後というように50代までは年齢とともに年収も上がるがその後下がっていき、60代以上では600万円前後になると言われています。

土地家屋調査士の独占業務は、不動産の表示に関する登記の申請です。

不動産の現況を正しく公示するものですので、現地で実測などを行う必要があります。

1日中炎天下の下で仕事をすることもあり、体力の必要な仕事です。

50代が年収額のピークといわれるのは、業務のノウハウや人脈などは拡大する一方で、体力面が続かなくなることが要因として挙げられるでしょう。

とはいえ、60代以上でもその人次第で年収850万円やそれ以上を目指すことは可能と考えられます。

補助者、独立開業、会社勤務の年収

土地家屋調査士有資格者の主な労働形態は3つあります。具体的に見ていきましょう。

資格はもっているが補助者として働く場合

土地家屋調査士試験に合格しても、営業や、実際にどのように測量・登記をするのかを更に学ぶ必要があります。

このような実務経験を得るため、個人が開業している土地家屋調査士事務所に入り、補助者として働いているのが1つ目のケースです。

土地家屋調査士白書2022』によると、全国で約2.2万人が補助者として活動し、40代の6,116人を中心に幅広い年代がいます。
補助者の求人を見ると、地域にもよりますが月収23万円以上となっているところが多く、年収に直すと300万円程度となります。

独立開業して働く場合

数年補助者で実務経験を積んだ後、自分の事務所を開業して働いているのが2つ目のケースです。

有資格者の働き方として最もポピュラーといっていいでしょう。

独立開業した場合の年収は個人の資質に比例します。

努力次第で仕事量を増やすことができ、必要経費を引いた所得が全て自分のものになるので、1000万円以上の年収を得ている方も多いです。

その一方、努力が実らず、補助者として勤務していた頃より年収が少なくなってしまう可能性もあります。

独立開業の場合、年収格差が大きいことが特徴といえます。

高収入にするための努力が必要ですね。

関連コラム:独立した土地家屋調査士の年収は?開業の流れや成功するためのポイントも解説

※独立しても廃業する可能性もある

土地家屋調査士として独立すると、個人差はあるが1000万円以上稼げる可能性もあると上述しましたが、独立しても廃業してしまう可能性もあります。

その主な理由は以下となります。

  • 顧客を獲得できなかった
  • 低価格にしすぎて収支が合わなかった
  • 事務所の立地選びを誤った(業務が少ない又は競争相手が多いなど)

土地家屋調査士は、意外と多くの経費がかかる仕事です。

顧客を獲得し、安定した収入を得るまでに資金が底をついてしまわないよう、余裕をもって準備しておく必要があるでしょう。

また、開業初期は、仕事が欲しいあまりに価格を安くしすぎて、収支が見合わなくなってしまうことも。

そのため、事業の継続可能性を意識した価格設定を考える必要があります。

せっかく独立開業したのに、すぐに廃業してしまうことのないようにしたいものです。

一方で土地家屋調査士には将来性がある

廃業する可能性もあると上述しましたが、土地家屋調査士には将来性が十分にあります。

その主な理由は以下となります。

  • 表示に関する登記は法律で義務づけられているため
  • 表示に関する登記は土地家屋調査士のみの独占業務であるため
  • AIが進歩しても代替できない仕事なため

法律で義務付けられている登記を独占的に行うことができるのが、土地家屋調査士の最大の強みです。

そして、その登記の前提として、現地調査や立会いが必要となるので、AIで代替することはできません。

こうしたことから、土地家屋調査士の仕事はなくならないと言われています。

将来性について詳しく知りたい方は以下も併せてご覧ください。

関連記事:土地家屋調査士は将来性のある仕事?長く活躍し続けるための4つのポイント

社員や使用人として働く場合

最近増えてきている労働形態が土地家屋調査士法人です。

自らが社員として立ち上げたり、そこで使用される使用人調査士として活動するというのが3つ目のケースです。

資格者同士がチームを組んで働けるため業務効率がよくなりますし、個人事務所に比べて信用が得られやすく営業がしやすいという特徴があります。

土地家屋調査士事務所に勤務する場合、求人を見ると年収は400~600万円という所が多いようですが、自ら法人を立ち上げ、業務を拡大すれば、年収2,000万円を超えることも可能でしょう。

エリア別の年収

土地家屋調査士の年収は、エリアによっても差があると考えられます。

エリア別の年収では、東京や大阪、愛知など人口が多い都市部で働く人の方が年収が高い傾向があるといえるでしょう。

都市部は不動産の取引が活発なため、それだけ調査士の仕事量も多くなります。

土地の取引の際には測量を行いますし、建物を新築すれば登記が必要となります。

案件が増えるだけ、年収も増えるわけです。

都市部での測量は、建物が密集して建っていることから難易度が高い傾向があり、それによって報酬額が上昇しやすいという一面もあります。

また、人口が多い地域ではマンションも多く建ちます。

分譲マンションを新築した際などは、その全ての部屋について登記を行うことから、1回の仕事で高額の報酬が発生することもあります。

土地家屋調査士は金持ちになれる?儲かる?

独立開業向きの士業は色々ありますが、中でも土地家屋調査士は利益が出しやすい士業といえるでしょう。

その要因の一つとして、資格者が少ないことが挙げられます。

土地家屋調査士の人口は、全国で16,000人程度です。そしてこの人数は、平成14年度の18,741人をピークに年々減少傾向にあります。

平均年齢が高いので、引退される先生が新たに登録される方よりも多いのです。

(『土地家屋調査士白書2022』より)

一方で、土地家屋調査士の仕事はなくなりません。

登記件数が年によって変動することはあっても、登記が義務であったり不動産取引において測量が必要とされる以上、一定の需要は維持されます。

さらに、相続登記が義務化されることから、これに付随して需要が伸びることも予想されます。

つまり、一人当たりが抱える仕事の数は増加する可能性があるのです。

2023年2月に試験に合格した後、すぐに開業したある方は、その年のうちに約1,000万円の売上を上げました。

その方は既に補助者として経験を積んでおり、すぐに仕事が回せる力をお持ちだったこともありますが、他の資格でここまで早く収益を上げられるものはあまりないのではないでしょうか。

土地家屋調査士として年収を増やすためには

土地家屋調査士の年収は格差が激しいです。

そのため、土地家屋調査士として年収を増やすためには以下のようなことが考えられます。

  • 不動産取引の盛んな場所に事務所をかまえる
  • 区分建物など高額な報酬の案件を受ける
  • 報酬を自分で設定できるので、料金を変える
  • 行政書士になる、司法書士になるなど、他の資格を兼ね備え、付加価値をつける

以下ではこの手段について、それぞれ詳細に見ていきます。

不動産取引の盛んな場所に事務所をかまえる

不動産取引の盛んな場所には、当然それをビジネスにしている不動産業者が多くあります。そうした業者と繋がりを持つことにより、多くの仕事を得ることができます

ただし、既に他の土地家屋調査士事務所と取引があることが通常なので、あまり強引な営業をかけて割り込むことはしない方がよいでしょう。

あくまで業者が土地家屋調査士を選ぶときの選択肢の一つにしてもらうことを心がけ、既存の土地家屋調査士事務所とも良好な関係を築くことが大事だと思います。

区分建物など高額な報酬の案件を受ける

区分建物とは、主にマンションのことです。

建物を新築すると、最初に「表題登記」というものを行います。これは、戸建てであれば、1個につき1件の登記にしかなりません。

しかし、マンションであれば、そのマンションの中に数十個や数百個の住宅がありますから、マンション1棟の登記を受注するだけで、戸建ての数十~数百倍の報酬を得ることができるのです。

※数が多い分、1個あたりの価格は安くなる傾向があります。

ただし、区分建物の登記には専門のノウハウが必要ですし、そうした案件を受任するためには、不動産屋との強い信頼関係も必要ですから、簡単というわけではありません。

報酬を自分で設定できるので、料金を変える

土地家屋調査士の報酬は自由化されていますので、どのような値付けも可能です。

そのため、業者にとって魅力的な価格設定にすることで、選んでもらいやすくすることが可能です。

ただし、無謀な値引きは自分の首を絞めることになります。

忙しいわりに儲からない、という悪循環になりますし、相場を乱すことにも繋がりますので、戦略のない値引きはよくありません。

業務を効率化させて低コストで納品できるようにしたり、逆に業者が喜ぶ付加価値を付けて高価格帯で勝負したりと、創意工夫によって収益を上げることができます。

行政書士になる、司法書士になるなど、他の資格を兼ね備え、付加価値をつける

土地家屋調査士と相性のいい資格を取得してワンストップサービスを提供できれば、業務の幅も広がりますし、アピールポイントになります。

特に相性のいい資格は「行政書士」と「司法書士」でしょう。

行政書士は、行政に提出する書類の作成や許認可申請がメイン業務となります。

土地家屋調査士の業務の一つに、土地の用途を変更した際の「地目変更登記」が挙げられますが、農地を農地以外の地目に変更するときは、農業委員会への届出や申請が必要になります。

行政書士を取得していれば、そうした業務もまとめて受任できるでしょう。

また、行政書士が手掛ける業務の中には、図面の作成が必要なものがあります。

一般的な行政書士は図面作成ソフトを持っていないことがほとんどですが、土地家屋調査士であれば図面作成はお手のものですから、行政書士業務としても強味を発揮することができます。

シナジー効果の高い資格の組合せといえます。

また、司法書士は、不動産登記と商業登記の専門家です。

つまり、土地家屋調査士と司法書士を取得していれば、「登記」と名のつくものは全てカバーできることになります。

例えば、建物を新築したときに、その建物の表題登記を土地家屋調査士として受任して、その後の所有権保存登記、抵当権設定登記を司法書士として受任する、といったこともできます。

こちらも非常に業務の幅が広がる組合せですので、不動産関係士業における最強のダブルライセンスといえるでしょう。

まとめ

土地家屋調査士の年収について解説いたしました。

改めて、本コラムのまとめを書きだすと以下の通りになります。

  • 土地家屋調査士の平均年収は600万円前後で、サラリーマンよりも相当高い
  • 20代から50代までは年齢とともに年収が上がり、それ以降は下がっていく傾向にある
  • 独立開業する場合は1000万以上の年収を得ている人も多い。ただし、廃業の可能性もある
  • 年収を増やすには不動産取引の盛んな場所に事務所を構え、頼みやすい価格設定、高額な案件を積極的に引き受ける、他の資格を取得し業務の幅を広げるなどを行う

土地家屋調査士として年収をアップさせたいと考えている方は、ぜひ本コラムを参考にしてみてください。

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この記事の監修者 中里ユタカ講師

中里 ユタカ講師

宅建士試験・行政書士試験・測量士補、土地家屋調査士試験にすべてストレートで合格。

まったくの初学者から、中山講師の講義を受けて8ヶ月で土地家屋調査士試験に合格。(択一13位、総合29位)

自らの受験経験で培った短期合格のためのテクニックを提供している。

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