賃貸不動産経営管理士は宅建を持っていると有利?宅建士との違いとダブルライセンスについて解説
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賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下、賃貸住宅管理業法)により、賃貸住宅管理業者が設置を義務付けられている「業務管理者」の要件とされた法体系に基づく国家資格です。
不動産業界で働く方にとって非常に注目度の高い資格となっており、特に賃貸業務を行っている宅建業者で働いている人にとっては宅建に次いで取得すべき資格になったとも言えるでしょう。
本コラムでは、宅建士と賃貸不動産経営管理士の違いやダブルライセンスのメリット、勉強方法などについて解説いたします。
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賃貸不動産経営管理士と宅建士 業務の違い
宅建士は独占業務のある国家資格であり、宅建士にしか行えない業務、独占業務があります。
一方賃貸不動産経営管理士は現在、賃貸不動産経営管理士のみの独占業務と言えるものはありませんが、賃貸住宅管理業法において、賃貸住宅管理業務を行ううえで設置が義務付けられている「業務管理者」の要件のひとつとされています。
業務管理者には、賃貸不動産経営管理士以外にも、「指定講習を終了した宅建士」もなることができます。
しかし、賃貸不動産経営管理士が国家資格化したという事は、近い将来、賃貸不動産経営管理士と宅建士の扱う業務は差別化がされる可能性もありえます。
それでは、賃貸不動産経営管理士と宅建士の業務は現状どのように分かれるのか、解説いたします。
宅建士の業務
宅建士は宅地建物の売買、賃貸借等の取引を仲介するプロとして独占業務のある資格です。
宅建士が行う事のできる独占業務には下記の3点があります。
- 宅地建物を売買、賃貸借する際の重要事項の説明
- 宅地建物を売買、賃貸借する際の重要事項説明書への記名、押印
- 宅地建物を売買、賃貸借する際の契約書への記名、押印
このように、入居する前に行う業務が中心となります。
また宅建士は、賃貸借取引だけでなく、売買も含めた不動産取引にまつわる業務全般を行います。
宅建士は宅建業法にて事務所の従業員5人に1人以上置かなければならないと定められており、不動産業界の宅建士の需要は非常に高いです。
関連コラム:宅建士の仕事内容について
賃貸不動産経営管理士の業務
賃貸不動産経営管理士の業務内容は賃貸物件に入居したあとのトラブル対応や不具合対応、退去時の敷金精算など、入居した後に行うものが中心となります。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸不動産の管理や運営に特化した資格です。
賃貸経営のプロとしてオーナーが円滑な賃貸経営を行うためのサポート業務を期待されています。
しかし上述した通り2022年現在、賃貸不動産経営管理士のみの独占業務はありません。
ただ、これから独占業務化されるであろうと考えられている業務に下記の3点があります。
- 受託管理契約締結時の重要事項説明
- 特定賃貸借契約締結・更新時の重要事項説明
- 業務管理者となる事
いずれも賃貸不動産経営管理士資格を所有している人でなければできない業務内容となることが予想されています。
オーナー・入居者の安心のためにも、不動産業界で今後ますます必要とされる資格になっていくでしょう。
関連コラム:賃貸不動産経営管理士の仕事内容について
業務管理者とは
登録をうけた賃貸住宅管理業者は、営業所又は事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を有する業務管理者を1名以上配置しなければなりません。
賃貸住宅管理業者は、業務管理者に、以下の事項についての「管理・監督に関する業務」を行わせなければならないこととされています。
- 管理受託契約の重要事項説明及びその書面の交付
- 管理受託契約書の交付
- 賃貸住宅の維持保全の実施、家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理
- 帳簿の備付け
- 定期報告(オーナーへの定期報告)
- 秘密の保持
- 入居者からの苦情の処理
- その他国土交通大臣が定める事項
なお、業務管理者には、宅建士で指定講習を修了した者もなることができますが、「宅建士で指定講習を修了した者」が「賃貸不動産経営管理士」になるわけではありません。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理に関する専門家として、賃貸不動産所有者の資産の有効活用、賃借人等の安全・安心を確保するといった非常に重要な役割を担っています。
関連コラム:賃貸不動産経営管理士と業務管理者の違いとなり方について
賃貸不動産経営管理士と宅建士 難易度の違い
過去5年の賃貸不動産管理士と宅建士の合格率推移です。
年度 | 賃管士 | 宅建士 |
令和5年度 | 27.9% | 17.2% |
令和4年度 | 27.7% | 17.0% |
令和3年度 | 31.5% | 17.9%(10月実施分) |
令和2年度 | 29.8% | 17.6%(10月実施分) |
令和元年度 | 36.8% | 17.0% |
出典:令和5年度 賃貸不動産経営管理士試験の概要 令和 5 年度宅地建物取引士資格試験結果の概要
合格率を比較すると基本的に宅建士の方が低いことがわかりますね。宅建の方が難易度は高いといえるでしょう。
しかし賃貸不動産経営管理士も国家資格化に伴い徐々に合格率が下がっています。
賃貸不動産経営管理士の試験は、2023年以降も合格率が更に下がっていく可能性があると予想されます。
どちらの試験も、しっかりとした試験対策が必要となるでしょう。
関連コラム:賃貸不動産経営管理士の難易度はどれくらい?合格点・合格率を確認
賃貸不動産経営管理士と宅建士 ダブルライセンスのメリット
賃貸不動産経営管理士と宅建士、両方の資格を持っていると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
下記2つの観点から解説します。
- 業務上のメリット
- 試験内容の被りの面でのメリット
業務上のメリット
一般的に賃貸管理業務と宅地建物取引業務は兼務されている会社が殆どです。
つまり、どちらの資格も持っていれば、管理業務も取引業務も行う事が出来るため、社内での活躍の場が増えます。
元々賃貸管理は宅建業者が担っている事がほとんどで、管理業法の施行以前に「管理業者」という名称は、一般名称として存在しても法的には存在しなかったので(疑似的な制度はありましたが)それを規制する法律も特にありませんでした。
つまり、現在、管理業者として国に対して登録を行っているのは大半が賃貸管理業務も行っていた宅建業者になります。
また、宅建士にしかできない独占業務があるように、上記で解説した賃貸不動産経営管理士にしかできない独占業務が、これからできていくと予想されます。
賃貸の管理と宅地建物取引の両方の業務を行えるダブルライセンス保持者は社内や転職時に重宝される可能性が高いでしょう。
試験内容の被りの面でのメリット
宅建の試験は10月、賃貸不動産経営管理士の試験は11月と試験期間が近いです。
試験内容も共通する部分が多い為、宅建の勉強を続けてきた人ならそちらの知識も充分残っており、合格の可能性も高まります。
そもそも上述した通り、宅建業と管理業は密接な関係にあります。
それぞれの業法に関しても似通った部分がありますし、民法や借地借家法の問題は両者の試験勉強での知識を相互で生かすことが活かすことが可能です。
効率よくダブルライセンスが取得しやすい資格となっています。
ダブル受験も可能?
宅建と賃貸不動産経営管理士のダブル受験は可能です。
そして、ダブル合格も十分に可能です。
2つ同時に目指す人や、先に宅建を取ってから賃貸不動産経営管理士を目指す人など、さまざまです。
今後の不動産業界を考えた時に、両方の資格を所有していることは強い武器になるでしょう。
前述の通り宅建試験は10月、賃貸不動産経営管理士の試験は11月と試験期間が近いため、ダブル受験を行うにはちょうど良い期間です。
2つの試験は、民法など試験内容が共通している部分もあるため、宅建の勉強を続けてきた人なら記憶が薄れないうちにそのまま賃貸不動産経営管理士の試験を受験できます。
なお、以下の動画ではアガルートアカデミー講師の工藤美香が、宅建と賃貸不動産経営管理士の試験において被っている分野について解説していますので是非ご覧ください。
おすすめ学習スケジュール
賃貸不動産経営管理士と宅建のダブル受験で同時取得を目指す場合、どのようなスケジュールで進めていけばよいのでしょうか。
基本的に勉強する順番は、宅建⇒賃貸不動産経営管理士がおすすめです。宅建をすでに持っている場合と、同時に取得を目指す場合それぞれのスケジュールについて解説します。
既に宅建を持っている(賃管士だけ新たに目指す)場合の学習スケジュール
賃貸不動産経営管理士試験に合格するために必要とされる勉強時間は、最低でも100時間は必要といわれています。
関連コラム:賃貸不動産経営管理士の勉強時間は?独学の場合・勉強方法も解説
既に宅建を持っているのなら、不動産の知識や勉強を積み重ねた経験がある分、試験は有利になるでしょう。
ただし、油断していると落ちる試験です。実際に、実務経験がある宅建業者の従業員で、宅建を持っている人でも勉強が足りなかったため落ちてしまったというケースは少なくありません。
また、賃貸不動産経営管理士の直近の合格率が下がってきていることも忘れてはいけません。
賃貸不動産経営管理士の試験は11月にあるため、そこから逆算してスケジュールを組み立てましょう。
例えば100時間勉強するとして、8月から勉強をスタートさせたとします。
8月9月は、勉強習慣を作ることや試験内容、出題傾向を掴むための基礎固めの期間として取り組みます。
日々の勉強習慣がついて、試験の基礎固めが終わりましたら、11月の試験本番に向けて、10月11月は、過去問題集を繰り返し解くことがおすすめです。
最低3回以上は解いて、わからない問題を確実につぶしていきましょう。
宅建を持っていてある程度知識があるという人も最低でも80時間は勉強時間を確保することをおすすめします。
その場合は9月から毎日1時間勉強することにするなど、同じように逆算してスケジュールを立ててみてください。
ダブル受験で同時取得を目指す場合の学習スケジュール
賃貸不動産経営管理士と宅建どちらもまだ持っておらず、ダブル受験を目指す場合の学習スケジュールとしては、宅建試験までは宅建の勉強に集中して、宅建の試験が終わったら、残り1か月で集中して賃貸不動産経営管理士の学習を行う流れが良いでしょう。
上記で解説したように、宅建のほうが賃貸不動産経営管理士よりも難易度が高いです。
宅建に合格できるレベルまで実力をつけておけば、自然と賃貸不動産経営管理士の合格も見えてきます。
宅建の試験日が10月、賃貸経営管理士の試験日が11月と、良いタイミングで2つの試験を受けることができます。
試験内容も権利関係など被っている部分があるため、一緒に受験したほうが効率が良いのではないでしょうか。
宅建試験のあとは、不動産の基礎知識がついている状態です。このタイミングが重要なのです。
賃貸不動産経営管理士の過去問題集を繰り返し解いて、間違えた箇所を集中して何度も解いていく流れで進めていくのが時間効率を考えるとおすすめです。
満点をとる試験ではないため、確実に合格ラインを超える勉強方法をしていきましょう。
※関連コラム:宅建おすすめ通信講座・予備校9社!ランキングでの比較も!
まとめ
結論として、宅建と賃貸不動産経営管理士のダブル受験は可能です。
不動産業界で宅建を持っている人は多いですが、賃貸不動産経営管理士の資格取得者はまだまだ少ないのが現状です。
ダブルライセンス保持者は、業界内でもまだ少なく、両方の国家資格を取得していると、重宝されるでしょう。
資格を通したご自身のスキルアップにより、業界内での強い武器を手に入れることができます。そして、不動産業界への就職や転職でも有利となります。
宅建士+αで、賃貸不動産のスペシャリストとして、賃貸不動産経営管理士の資格取得にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。
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不動産会社への入社をきっかけに、不動産関連資格の学習を開始。
何事も諦めないをモットーに、不動産会社での実務やモデル業と学習を両立させ、マンション管理士試験、管理業務主任者試験、宅建試験、賃貸不動産経営管理士試験全てにストレートで合格。
学習の継続のしやすさに重きを置き、要点の分かりやすいコンパクトな講義、受講生目線に立った使いやすいテキストの制作に心血を注いでいる。
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