弁理士になる方法を調べてみたけれど、制度が複雑過ぎて、具体的にどのようにすれば弁理士になれるのか疑問に思っておられる方も多いと思います。

このコラムでは、弁理士試験に最短ルートで合格し、弁理士として活躍中の筆者が、弁理士になるにはどうしたらよいか、なり方の流れをわかりやすく解説します。

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弁理士になるには?なり方をチェック

弁理士になるには、以下のステップが必要となります。

  • 1.弁理士試験に合格する
  • 2.実務修習を修了する
  • 3.弁理士登録をする

実は弁理士試験に合格したとしても、すぐに弁理士になれるわけではありません。

弁理士試験に合格して弁理士になるには、以下の①~③の手続きを経る必要があります。

まずは、これらの手続きについて概要をご説明します。

①弁理士試験に合格する

毎年一回実施される弁理士試験に合格することが、②の実務修習を受講するための条件の1つとなっています。

②実務修習を修了する

日本弁理士会が実施する実務修習という講習会を修了して初めて、 ③の弁理士登録をする資格を得ることができます。

③弁理士登録をする

日本弁理士会に弁理士として登録するための手続きをします。

この手続きを経て初めて弁理士になれます。

後述するように、弁理士試験に合格する以外にも弁理士になる条件はありますが、いずれの条件を満たす場合であっても、②と③の手続きは必ず必要です。

関連コラム:弁理士とはどんな資格?仕事内容や主な業務など徹底解説!

手順1 弁理士試験に合格する

前述したように弁理士試験に合格するルートで弁理士になるためには、まずは弁理士試験に合格する必要があります。

弁理士試験は、弁理士として必要な学識および応用能力を有しているかを判断するための試験です。

そのため、弁理士試験では、弁理士として必要な法律知識が広く問われるだけではなく、その知識を応用して問題のポイントを的確に把握し、的確な回答を導き出せるかどうかといった応用力をも問われる試験となっています。

弁理士の受験資格について

資格試験には受験資格が設けられているものもありますが、実は弁理士試験には受験資格が定められていません。

学歴や専門分野、年齢に関わらず、誰でも受験することができます。

弁理士試験の内容

弁理士試験には、①短答式筆記試験、②論文式筆記試験(必須科目、選択科目)、③口述試験の3種類があり、これらすべてに合格することが求められます。

①短答式筆記試験は、マークシート式の択一試験です。

特許法・実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、条約の範囲から60問出題されます。

②論文式筆記試験(必須科目)は、論文式という名前の通り、論文のような量の回答を記述する方式で、特許法・実用新案法、意匠法、商標法についてそれぞれ数問ずつ出題されます。

論文式筆記試験には選択科目という試験もあり、法律または理系科目の中から1科目選択して受験する必要があります。この選択科目については、他の資格保有等を理由に免除制度を利用する人も多いです。

③口述試験は、その名の通り、試験官と対面して口頭で回答する試験です。この試験も独特許法・実用新案法、意匠法、商標法についてそれぞれ数問ずつ出題されます。

試験日程は、例年であれば、

①短答式筆記試験が例年5月中旬~下旬、

②論文式筆記試験(必須科目)が6月下旬~7月上旬、

論文式筆記試験(選択科目)が7月中旬~7月下旬③口述試験が10月中旬~10月下旬

となっています。

令和2年度、令和3年度試験は新型コロナの影響で時期をずらして行なわれました。

弁理士試験の難易度(合格率など)

弁理士試験の難易度はかなり高く、年によって多少の変動はあるものの、合格率は常に10%を下回っています。

合格者の平均受験回数は例年およそ4回となっており、多くの人が長期間勉強してやっと合格していることが分かります。

受験資格なし
受験費用受験手数料 12,000 円
試験日程①5月中旬~下旬、②6月下旬~7月下旬、③10月中旬~下旬
①3時間半、②5時間(+1時間半)、③30分
試験方式①択一式(マークシート方式)、②記述式、③口述式
試験内容①6科目、②3科目(+1科目)、③3科目
合格基準①60点中39点以上、②100点中54点以上、③3科目中2科目以上完答

手順2 実務研修を受ける

実務修習は毎年一回日本弁理士会が行っており、次のステップである弁理士登録に進むためには、この実務修習の修了証書が必要です。

弁理士試験に合格することで、弁理士に求められる最低限の知識が身についたことが証明される訳なのですが、弁理士として実際に業務を行なうには、さらに実務上の知識やスキルを習得する必要があります。

実務修習は、弁理士となる者であれば全員が知っておくべきことを習得するための場として設けられています。

実務修習は例年、東京、大阪、名古屋のいずれか希望する会場で行なわれます。ただし、令和3年は感染症の影響でオンラインで行なわれました。

日程は例年、弁理士試験の合格発表後すぐの11月頃に申し込み期間が設けられており、12月中旬頃に実務修習のテキストや課題一式が郵送されてきます。

年末年始返上でウェブ講義の視聴と課題提出を行ない、年が明けてからは集合研修が始まり、3月中旬まで続きます。

集合研修は会場によって開催される曜日や時間が異なるようですが、例えば隔週で土曜日のコースの場合、毎回朝9時から夕方5時まで一日中講義を受けることになります。

実務修習の内容は、多岐にわたりますが、基本的にウェブ講義システムで事前に学習した内容に基づいて、課題を提出し、その後集合研修が行わる流れとなっています。

実務修習を受けるために必要な費用は、弁理士法で定められており、118,000円となっています。

これ以外にも、会場から自宅までが遠い場合などには交通費や宿泊費等が別途必要です。

修了するには期間中に開催されるすべての集合研修に参加することが求められ、遅刻や欠席は一切認められません。

さらに、各科目ごとに事前に課題が設定されており、すべての課題を期日までに提出しておく必要があります。

また、提出した課題は講師によって採点され、合格点に達していなければ再提出となります。

手順3 登録する

実務修習の修了証書を貰えたら、いよいよ登録手続きを行なうことができます。

弁理士になるためには、日本弁理士会に登録手続き(弁理士登録申請)をする必要があります。

申請は日本弁理士会に持参するか、または郵送で行います。

弁理士登録には合計で110,800円が必要です。

内訳は以下の通りです。

 (1)登録免許税 60,000円

 (2)登録費用 35,800円

 (3)登録月の会費 15,000円

また、これら以外にも前述した様々な書類を準備するための費用や、郵送で手続きをするための郵送費等が別途必要です。

前述した書類一式が日本弁理士会に到着すると、日本弁理士会で審査が行なわれます。この審査には通常10日ほどの期間がかかるようです。

実務修習が終わった直後みは多数の登録申請が集中しますので、筆者が手続きをした時も書類を送付してから2週間程度かかったような記憶があります。

その他、弁理士になれる方法

ここまでは、弁理士試験に合格することによって弁理士になる方法を解説してきましたが、弁理士になる方法は他にもあります。

弁理士試験に合格する以外に弁理士になる方法としては、以下の2つがあります。それぞれについて解説します。

弁護士となる資格を有する者

原則として司法試験に合格して司法修習を修了した者であれば、弁理士となる資格を有する者として扱われます。

そのため、弁理士試験を受験して合格することなく、前述した実務修習を修了し、登録手続きを経ることで弁理士登録をすることができます。

特許庁において審判官または審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

特許庁において審判又審査に所定期間以上従事している者についても、弁護士となる資格を有する者と同様に、実務修習を修了し、登録手続きを経ることで、弁理士試験を受験することなく弁理士になることができます。

弁理士になれない人

実は、弁理士になることができない条件もあります。

その条件は以下の通りです。この条件に当てはまってしまうと、たとえ弁理士試験に合格し、実務修習を修了して登録手続きをしたとしても弁理士になることはできません。

(1)刑事処分を受けた者

禁固刑を受けたことがある、又は所定の刑事処分を受けてから所定期間以上経過していない場合には弁理士登録を受けることができません。

具体的には以下の通りです。

・禁固以上の刑に処せられた者

・弁理士法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、又はその刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から、5年を経過しない者

・関税法、著作権法、半導体集積回路配置に関する法律又は不正競争防止法の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない者

(2)業務上の処分を受けた者

公務員や士業において業務上の懲戒処分等を受けて、その処分から所定期間以上経過していない者は弁理士登録を受けることができません。

具体的には以下の場合が挙げられています。

 ・公務員で懲戒免職の処分を受け、その日から3年を経過しない者

 ・弁理士法第23条第1項の規定により弁理士登録の取消しの処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者

 ・弁理士法第32条の規定による業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者

 ・弁護士会からの除名、公認会計士の登録の抹消又は税理士の業務の禁止の処分を受け、これらの処分の日から3年を経過しない者

 ・弁理士法に定める業務の停止の懲戒処分を受け、停止期間中に弁理士登録が抹消されて、停止期間を経過しない者

(3)制限行為能力者など

つまり、自分の意思で自由に法律行為を行うことができない者であり、以下の場合が規定されています。

・未成年者

・破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

まとめ

弁理士になる方法としては3つのルートがあることを説明しましたが、ほとんどの方は弁理士試験合格というルートでの弁理士資格を取得を目指すことになるのではないかと思います。

弁理士試験は、前述したように試験範囲が非常に広く、難易度の高い資格試験です。

最短での合格を目指すのであれば、試験の傾向やポイントを徹底的に分析した上で提供されている弁理士試験講座を受講するのが断然おすすめです。

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