弁理士試験の論文式の勉強法!過去問の使い方や書き方、選択科目など
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弁理士試験の最大の山場である論文式試験。
勉強を始めたばかりの初学者はもちろん短答式試験に合格した受験生にとっても悩みの種であるのではないでしょうか。
そこで、今回は論文式試験にたった一度の受験で合格した筆者が、論文式試験の効率的な勉強方法について徹底解説します。
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弁理士試験の論文式試験について
まずは弁理士の論文式試験について説明していきます。
弁理士試験の最大の関門
弁理士試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験という3種類の試験からなります。
短答式試験に合格すると次の論文試験に進むことが可能です。
論文式試験は、豊富な知識量を求められる短答式試験に合格した精鋭ばかりが受験する試験であり、弁理士試験の最大の関門。
しかも短答式試験から論文式試験までの期間は非常に短いために、対策に工夫が求められる試験であるとも言えます。
論文式試験の概要
論文式試験は、その名の通り論文のような長文を記載させる筆記試験。
論文式試験には必須科目と選択科目とがあり、それぞれ以下のような試験内容となっています。
必須科目の内容及び各科目の試験時間は以下の通りです。
必須科目の試験時には法文集が貸与されます。
- 特許・実用新案に関する法令 3時間
- 意匠に関する法令 1.5時間
- 商標に関する法令 1.5時間
選択科目は以下の選択科目の中から1つを選んで受験します。試験時間は1.5時間。
法律を選択科目とする場合には、法文集が貸与されます。
- 理工I(機械・応用力学)
- 理工II(数学・物理)
- 理工III (化学)
- 理工IV (生物)
- 理工V (情報)
- 法律(弁理士の業務に関する法律)
論文式試験の合格率と合格点・合格基準について
論文式試験の合格率は一体どのくらいなのでしょうか。
必須科目及び選択科目のそれぞれについて、合格率の推移及び合格基準を以下にまとめてみました。
論文式試験の合格率:例年23~28%
平成28年から令和6年までの論文式試験の合格率は23%~28%となっています。
この数字だけを見ると合格率が高いように感じるかもしれません。
しかし、論文式試験は短答式試験に合格した者のみが受験できる試験であるために、非常にレベルの高い争いとなっていることを忘れてはいけません。
試験の傾向を掴んで、しっかりとした対策をする必要があります。
年度 | 合格率 |
令和6年 | 27.5% |
令和5年 | 28.0% |
令和4年 | 26.3% |
令和3年 | 25.1% |
令和2年 | 25.0% |
令和元年 | 25.5% |
平成30年 | 23.9% |
平成29年 | 24.2% |
論文式試験(必須科目)の合格基準
必須科目の合格基準は、標準偏差による調整後の各科目の得点の平均が54点以上であり、47点未満の得点の科目が一つもないこと。
必須科目の合格基準は、相対的な評価となっています。
そのため、他の受験生が答案に書けない難しい内容を理解するよりも、他の受験生がみんな記載する基本的な論点を落とさないことが大切です。
そのため、勉強にいくら時間をかけていても、勉強の方向性を間違えてしまうと合格しにくい試験であると言えます。
論文式試験(選択科目)の合格基準
選択科目の合格基準は、科目の得点(素点)が満点の60%以上であること。
合格基準が相対評価ではないために、必須試験に比べると勉強の成果を発揮しやすい試験であると言えます。
論文式試験の免除制度について
弁理士試験にはいろいろな免除制度が設けられており、論文式試験にも免除制度があります。
論文式試験(選択科目)の免除制度
以下のいずれかに該当する場合には、論文式試験の選択科目の受験を永久に免除されます。
ただし、免除の手続きに必要な書類を取得するために時間がかかることもありますので、受験を考えておられる方は早めに準備に取り掛かる必要があります。
特に、特許庁が指定する公の資格を取得することを考えておられる場合には、どのタイミングで資格取得のための試験を受ける必要があるのか等を事前に良く調べておくようにしましょう。
- 平成20年度以降の論文式筆記試験選択科目に合格した方
- 修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定を受けた方
- 特許庁が指定する他の公的資格を有する方
その他の免除制度
また、論文式試験の免除制度ではありませんが、短答式試験に一度合格すると、その年の合格発表から2年間は短答式試験の全ての科目について試験が免除されます。
また、工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了したり、特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した場合にも短答式試験の一部免除があります。
弁理士試験の論文式の勉強法を現役弁理士が解説
さて、いよいよ論文式試験の勉強方法について解説していきます。
必須科目と選択科目では対策方法が全く異なりますので、それぞれについて以下に説明します。
特に必須科目については、前述したように他の受験生がみんな書いている基本的な項目をどれだけ落とさずに解答できるかどうかが合否を分ける鍵となるでしょう。
以下の勉強方法を参考にして、自分なりの勉強方法を見つけて頂ければと思います。
また、筆者が実際に各項目に充てた勉強時間についても記載していますが、あくまで一例として参考にして頂ければと思います。
論文式試験(必須科目)の勉強方法
1.全文書き(およそ10時間)
まずは必須科目の解答とは一体どのようなものなのか、どのくらいの量の文章を書くのか、実際に体感することが重要。
論文式試験の必須科目の勉強をいざ始めようと思っても、はじめは一体何をどのように解答すれば良いのか皆目検討もつかないのではないでしょうか。
そこで、過去問集を用意して模範解答を一字一句省略せずに全てノート等に書き写してみましょう。
内容は分からなくても大丈夫なので、とにかく手を動かします。過去3年分程度できれば十分だと思います。
普段文字をたくさん書かない方は、この作業をしながらボールペンや万年筆をいろいろと試してできるだけ使いやすい筆記用具を選定しておきましょう。
2.問題文と模範解答との読み合わせ(およそ30~40時間)
全文書きの次にやるべきことは、問題文と模範解答の読み合わせ。
この作業は、必須科目の勉強の中で最も大事な作業の一つであると考えています。
過去問集の模範解答を実際に読むと分かりますが、実は論文式試験の解答はそのほとんどが問題文の内容に沿って出来上がっています。
問題文のどの言葉が解答のどの場所に現れているのかを順を追って見ていくうちに、問題文と解答との関係性(問題文のどのキーワードが解答のきっかけになっているのか)がだんだん分かってくるでしょう。
過去5年分~7年分の過去問についてこの作業を繰り替えしましょう。
この作業を通して、問題文と解答との関係性が分かれば、もう自分で解答をほとんど書けるようになっているはずです。
3.答案構成(およそ30時間)
問題文と模範解答との読み合わせができたら、次はいよいよ答案構成。
弁理士試験の勉強における「答案構成」とは、解答に記載すべき項目(条文)を記載する順に列挙する作業のことです。
このように説明しても勉強を始めたばかりの方には良く分からないと思いますが、大丈夫。
先ほど説明した問題文と模範解答との関係性が分かれば「あ~、なるほど」と腑に落ちるはずです。
問題文を読んでいるとたくさんのキーワードが出て来ます。このキーワードに逆らわずに、キーワードに対して答えるべき内容(主に条文)を順番にメモしていけば答案構成ができあがります。
答案構成ができれば、あとはそれを文章にすれば模範解答のような解答が出来上がるというわけです。
4.覚えるべき項目の整理と反復練習
答案構成ができるようになっても、そこから模範解答のような解答を書くにはもう一つのステップが必要。
それが、解答を作るための文章のブロックを手に入れておくことです。
実は模範解答には、お決まりの文章が出てくることがあります。いわゆる判例や条文の解釈、用語の定義などについての文章です。
そんなにバリエーションは多くないので、過去10年分程度の過去問の模範解答からこれらお決まりの文章を見つけだして、ノート等にまとめておきましょう。
あとは試験まで繰り返し書いて、覚えてしまえば大丈夫です。
判例は勉強しだすときりがないので、過去問に登場している又は重要判例だから覚えるようにと特筆されている判例を除いてはあまり神経質に勉強しなくても大丈夫でしょう。
5.試験と同じ時間での問題を解く
どんなに時間がなくても最低限絶対にやってほしいことがあります。
それは、本番と同じようにきちんと時間制限を設けて解答を作成する練習。
必須科目の勉強が進んでくると、必須科目の試験時間はとても短いということに気が付くはずです。
試験時間内での時間配分を間違えると答えが分かっているのに解答を書ききれないという事態に陥りかねません。自分の字を書く速さを確かめて、できるだけ完成度の高い解答を作るための戦略を練っておきましょう。
論文式試験(選択科目)の選び方
選択科目はどの科目を選択しても問題ありませんが、やはり自分が大学等で専攻した科目を選択するのが現実的かと思います。
筆者の場合も大学での専攻がバイオだったために、理系IVの生物を選択しました。
ただ、勉強のしやすさを考えて、過去問があるのかどうかを調べてから選択科目を決めるようにしてもよいかもしれません。
弁理士試験の選択科目は、その科目を選択した受験生がいない場合には問題が作成されないので、科目によっては最近の過去問がない科目もあるからです。
論文式試験(選択科目)の勉強方法
まずは自分の選択した科目の過去問があるのかどうかを調べましょう。
過去問がある場合には、過去問が存在している年度の過去問をできれば3年分程勉強して解答できるように繰り返し勉強しておくのが良いでしょう。
選択科目は相対評価ではないので、勉強した分だけしっかりと点数を取れるはずです。
論文式試験の試験日程と合格発表
論文式試験の試験日程は、必須科目が例年7月初旬、選択科目が例年7月中旬~下旬となっており、合格発表は9月の下旬頃となっています。
合格発表は特許庁ホームページで公開され、その後郵送で合否が通知されます。
特許庁の掲示板にも合格者の番号が貼りだされるようで、特許庁まで合格発表を見に行く方もおられるようです。
論文式試験後のスケジュール
論文式試験に合格すると、いよいよ最終試験である口述試験を受験することになります。
口述試験の受験票や受験日時等についての詳細は、合格発表から1週間程で、論文式試験の合格通知に同封されて郵送で届いたと記憶しています。
口述試験の会場は東京会場のみとなっていますので、試験日時が分かったら宿泊施設の予約や交通手段の確保等、すぐに準備を進めることが必要。
論文式試験の後の過ごし方
論文式試験は試験が終わった後の疲労感が大きく、特に必須科目は相対評価であるために合格の手ごたえを感じることが難しい試験であるので、論文式試験の後すぐに口述試験の勉強を始める気になれない方も多いと思います。
ですが、口述試験は論文式試験の合格発表から一か月足らずで行なわれますので、論文式試験が終わったら合否に関わらず、すぐに口述試験の勉強を始めておく必要があります。
口述試験はいろいろな意味で大きなプレッシャーと戦うことになる試験ですので、勉強不足で不安を抱えたまま受験することだけは避けたいところです。
勉強が難しい、なかなか進まないときは
特に勉強を始めたばかりの頃は、論文式試験の勉強はハードルが高すぎて、取り組みにくいと感じられるかもしれません。
そんな時は、全文書き等の頭で難しく考えなくてもできる作業からとにかく取り組んでみるというのも手ですし、基本に立ち返って、参考書や予備校の基本講座をとにかく勉強して不安をある程度なくしてから改めて取り組んでも遅くはないと思います。
実際に筆者の場合には、短答式試験が終わってから論文式試験の勉強を始めましたが、その年の論文式試験に合格することができましたので、このことは実証済み。
論文式試験の勉強がなかなか進まないな、まだ自分には早いのではないだろうかと感じた場合には、無理に論文式試験の勉強を進めるのではなく、短答式試験に合格するだけの力があれば論文式試験にも合格できるだろうというくらいの気持ちで焦らず基礎を固めることに注力してもよいでしょう。
弁理士試験に短期合格できるかどうかは自分に合った勉強方法と出会えるかどうかに係っているといっても過言ではないと考えています。
いろいろな勉強方法を検討して、これだ!と思える自分に合った勉強方法を見つけて頂ければと思います。
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Naoko
京都大学大学院農学研究科修了。
研究者を目指し大学に残ったものの、結婚出産を経てより子育てのしやすい環境を求めて知財業界へ。
特許事務所で特許事務(国内・海外)を3年程経験した後、第3子の出産を機にパラリーガルに転身。弁理士試験に挑戦し、一発合格。
現在、特許事務所で弁理士として活躍。