弁理士の選択科目とは?科目免除やおすすめについても解説!
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弁理士試験の論文試験には、必須科目と選択科目があります。
論文式試験の必須科目については勉強が進んでいるけれども、選択科目については不安がある方もおられるのではないでしょうか。
そこで、このコラムでは、弁理士試験の選択科目について、試験内容や攻略方法について詳しく解説します。
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弁理士の論文試験の選択科目とは?
弁理士試験の概要
弁理士試験は毎年1回開催され、5月頃から11月頃までの長期間にわたる試験となっています。
弁理士試験は、以下の3つの試験から構成されています。
- 短答式試験
- 論文式試験
- 口述試験
短答式試験はいわゆる一次試験に相当するものです。
この試験に合格した者だけが2次試験である論文式試験に進むことができます。
そして、論文式試験を突破して初めて3次試験である口述試験を受験することができます。
試験概要や各科目については以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:【2024年最新】弁理士試験の試験概要・試験科目など
論文式試験の必須科目と選択科目
これら3つの試験の中でも弁理士試験の山場である論文式試験には、「必須科目」と「選択科目」の2種類があります。
「必須科目」と「選択科目」の各試験は、短答式試験の合格発表から1か月程の間に次々と行なわれます。
弁理士試験の受験生にとって試験期間中で一番きつい時期であることは間違いありません。
各科目の試験内容は以下のようなものとなっています。
必須科目
必須科目は、特許法・実用新案法、意匠法及び商標法についての試験であり、弁理士試験受験生が全員受験しなければいけない試験です。
前述した3科目の試験を一日で行うため、試験時間は合計5時間にもおよびます。
また、法律知識、文章力、論理力だけでなく、体力や精神力も求められる過酷な試験となっています。
この試験に合格するためには、相対評価による3科目の試験の平均点が54点以上、すべての科目の点数が47点以上である必要があります。
選択科目
一方の「選択科目」は、法律科目だけではなく、理工系科目を選択することもできる試験となっています。
弁理士は、最先端の科学技術を扱う特許出願についての相談業務や出願書類の作成等、法律の知識だけでは対処できない仕事を担当する機会が少なくありません。
そのため、理工系科目についての十分な知識があることも弁理士に求められる重要な資質となります。
そこで、弁理士試験においては選択科目として理工系科目の知識を問う試験も選択できるようになっているのです。
論文式試験の選択科目は、以下の科目の中からいずれか1つを選択することとなっています。
科目 | 選択問題 | |
1 | 理工I(機械・応用力学) | 材料力学、流体力学、熱力学、土質工学 |
2 | 理工II(数学・物理) | 基礎物理学、電磁気学、回路理論 |
3 | 理工III(化学) | 物理化学、有機化学、無機化学 |
4 | 理工IV(生物) | 生物学一般、生物化学 |
5 | 理工V(情報) | 情報理論、計算機工学 |
6 | 法律(弁理士の業務に関する法律) | 民法※ |
これら選択科目のうち、法律以外の各選択科目においては、それぞれの選択科目において複数種類の選択問題が用意されています。
これら選択問題のうちいずれかを選択して解答する必要があります。
例えば、選択科目として「理工Ⅰ」を選択した場合には、「材料力学」、「流体力学」、「熱力学」、「土質工学」の選択問題の中からいずれかを選ぶこととなります。
試験時間は1.5時間で、60%以上の得点で合格となります。
この選択科目は弁理士試験の出願時に選択する必要があり、出願後には一切変更ができないため慎重に選ぶ必要があります。
以下では、各選択科目について詳細に説明していきます。
理工Ⅰ(機械・応用力学)
前述した通り、理工I(機械・応用力学)の選択科目には、以下の4つの選択問題があります。
受験生は出願時にこれら選択問題の中から1つを選択する必要があります。
- 材料力学
- 流体力学
- 熱力学
- 土質工学
平成30年度から令和4年度までの5年間において、理工Iを選択した受験生のほとんどが材料力学又は熱力学を選択しています。
以下に、各選択問題の一例として、令和3年度の過去問を挙げます。
土質工学については平成27年度以降試験が行なわれていないため、平成26年度の過去問を挙げます。
材料力学
特許庁HPより引用
流体力学
特許庁HPより引用
熱力学
特許庁HPより引用
土質工学
特許庁HPより引用
理工Ⅱ (数学・物理)
理工II(数学・物理)の選択科目には、以下の3つの選択問題があります。
他の選択科目と同様に、受験生は出願時にこれら選択問題の中から1つを選択する必要があります。
- 基礎物理学
- 電磁気学
- 回路理論
理工IIについては、他科目と比べれば過去問が多く存在しているために比較的勉強がしやすい状況にあると言えます。
以下に、各選択問題の一例として令和3年度の過去問を挙げます。
基礎物理学
特許庁HPより引用
電磁気学
特許庁HPより引用
回路理論
特許庁HPより引用
理工Ⅲ(化学)
理工III(化学)の選択科目には、以下の3つの選択問題があります。
他の選択科目と同様に、受験生は出願時にこれら選択問題の中から1つを選択する必要があります。
- 物理化学
- 有機化学
- 無機化学
理工IIIについては、過去問が多く存在しているために比較的勉強がしやすい状況にあると言えます。
以下に、各選択問題の一例として令和3年度の過去問を挙げます。
物理化学
特許庁HPより引用
有機化学
特許庁HPより引用
無機化学
特許庁HPより引用
理工Ⅳ(生物)
理工IV(生物)の選択科目には、以下の2つの選択問題があります。
他の選択科目と同様に、受験生は出願時にこれら選択問題の中から1つを選択する必要があります。
- 生物学一般
- 生物化学
理工IVについても過去問が存在しているために、この選択科目についても比較的勉強がしやすい状況にあると言えます。
以下に、各選択問題の一例として令和3年度の過去問を挙げます。
生物学一般
特許庁HPより引用
生物化学
特許庁HPより引用
理工Ⅴ(情報)
理工V(情報)の選択科目には、以下の2つの選択問題があります。
他の選択科目と同様に、受験生は出願時にこれら選択問題の中から1つを選択する必要があります。
- 情報理論
- 計算機工学
以下に、各選択問題の一例として、情報理論は令和3年度の過去問を、計算機工学は令和2年の過去問を挙げます。
情報理論
特許庁HPより引用
計算機工学
特許庁HPより引用
法律 (弁理士の業務に関する法律)
法律(弁理士の業務に関する法律)の選択科目の選択問題は民法のみとなっており、選択問題を選ぶことはできません。
以下に、この選択科目の選択問題の一例として令和3年度の過去問を挙げます。
民法
特許庁HPより引用
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弁理士の選択科目には「免除制度」がある
ここまで弁理士試験の選択科目について説明してきましたが、実は選択科目には免除制度があります。
選択科目を受験しなくてよければ、他の試験科目の勉強により多くの時間を割くことができるので助かりますよね。
選択科目が免除されるための要件は、以下の3つです。
- 平成20年度以降の論文試験合格者
- 各選択科目に関する修士・博士の学歴を有する者
- 各選択科目に関する別の公的資格を有する者
各免除要件について以下に詳しく説明していきます。
平成20年度以降の論文試験合格者
平成20年度以降の論文式筆記試験選択科目に一度合格すると、選択科目の試験が免除されます。
弁理士試験の受験願書提出時に「弁理士試験論文式筆記試験科目免除通知(写し)」を添付する必要があります。
免除通知をなくしてしまった場合には、再発行してもらうことも可能です。
しかし、次回の弁理士試験で選択科目の免除を受けたい場合には再発行申請に期限があります。
そのため、次回弁理士試験において選択科目の免除を希望する方は早めに免除通知をなくしていないか確認しておくようにしましょう。
各選択科目に関する修士・博士の学歴を有する者
各選択科目に関する修士・博士、又は専門職の学歴を有する者であって、工業所有権審議会から論文式筆記試験選択科目免除資格の認定を受けた方は、選択科目の試験が免除されます。
選択科目免除の認定を受けるためには、
- 免除認定申請書
- 学位取得証明書
- 大学院成績証明書(博士の場合は不要)
- 学位論文概要証明書又は学位論文の全文
- 修了要件証明書(専門職のみ)
を工業所有権審議会に提出し、審査を経て免除認定を得る必要があります。
書類の準備も大変ですし、提出後の審査にも時間がかかります。
そのため、選択科目の免除申請を考えておられる方は早めに手続きをするようにしましょう。
各選択科目に関する公的資格を有する者
各選択科目に関する公的資格を持っておられる方は、選択科目が免除されます。
どのような公的資格が対象となるのかについては、以下の表をご覧下さい。
公的資格による選択科目免除一覧
公的資格者 | 願書に記載する選択科目 |
技術士であって、別表1に記載する技術士試験の選択科目に合格した者 | 別表1を 御参照ください。 |
一級建築士 | 理工Ⅰ(機械・応用力学) |
第一種電気主任技術者免状 又は第二種電気主任技術者免状の交付を受けている者 | 理工Ⅱ(数学・物理) |
薬剤師 | 理工Ⅲ(化学) |
電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者 | 理工Ⅴ(情報) |
情報処理安全確保支援士試験の合格証書の交付を受けている者 | 理工Ⅴ(情報) |
司法試験に合格した者 など | 法律 (弁理士の業務に関する法律) |
司法書士 | 法律 (弁理士の業務に関する法律) |
行政書士 | 法律 (弁理士の業務に関する法律) |
特許庁HPより引用
各資格によって免除申請に必要な書類などが異なります。
詳しくは毎年1月頃に特許庁HPに掲載される試験公告の内容を確認し、早めに必要書類を準備しておくことをおすすめします。
※関連コラム:弁理士試験の選択科目が免除になる応用情報技術者とは?資格取得のメリット
弁理士試験の選択科目のおすすめはどれ?
選択科目を受験する必要がある方にとっては、おすすめの選択科目があるのかが気になるところだと思います。
そこで、まずは選択科目の試験統計を見てみましょう。
以下の表8及び表9は令和6年度弁理士試験統計記載の、令和6年度の選択科目の内訳と選択科目受験生の出身系統内訳を示したものです。
表8 選択科目内訳
科目名 | 人数 | % |
理工Ⅰ(機械・応用力学) | 22 | 15.4 |
理工Ⅱ(数学・物理) | 12 | 8.4 |
理工Ⅲ(化学) | 22 | 15.4 |
理工IV(生物) | 8 | 5.6 |
理工Ⅴ(情報) | 21 | 14.7 |
法律(弁理士の業務に関する法律) | 58 | 40.6 |
計 | 143 | 100.0 |
表9 出身系統別内訳
系統 | 人数 | % |
理工系 | 83 | 58.0 |
法文系 | 44 | 30.8 |
その他 | 16 | 11.2 |
計 | 143 | 100.0 |
表9からは、選択科目受験者の出身統計としては、理工系が最も多く58.0%となっていることが分かります。
一方で、表8からは、選択科目の中で最も受験割合が高い選択科目は法律であることが分かります。
表8の選択科目理工I~理工Vの受験者の割合の合計が59.5%、表9の理工系出身者の割合が58%となっており、理工系出身者は理工系の選択科目を選択している可能性が高いと推測できます。
理工系出身者は自身の専攻と同じ選択科目の受験
理工系出身者であり、選択科目に自身の専攻と同じ科目がある場合には、大学等での学びを弁理士試験に直接活かすことができます。
そのため、選択科目に自身の専攻と同じ科目がある理工系出身者はその科目を選ぶのが一般的であると考えられるでしょう。
一方で、理工系出身者であっても、選択科目に自身の専攻と同じ科目が存在しない場合には、選択科目として法律(民法)を選ぶことが一般的であるようです。
その理由としては、新しく理工系の選択科目の勉強をするよりは、弁理士試験の必須科目においてもその知識が求められる法律(民法)を勉強するほうが効率的であることが挙げられます。
その他の受験者(文系など)は法律を受験
前述したように、全体としては選択科目の中でも法律科目が選択される割合が一番高くなっています。
理工系以外の出身者の場合、特に法文系出身者の場合には、大学受験科目などの関係により理工系科目の学習経験が一般的に少ない傾向にあります。
弁理士試験においても理工系科目が敬遠されて、より親しみのある法律(民法)を選択する傾向にあるからであると考えられます。
また、予備校においても司法試験向けの民法講座などが充実していることから、試験対策がしやすいことも法律(民法)が人気である理由であると考えられます。
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