国際弁理士とは?年収は?なるには?日米欧韓比較!
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国際弁理士という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
この記事では、国際弁理士とは何かについて、「現役の国際弁理士」が解説していきます。
さらに日米欧韓の弁理士について比較し、国際弁理士になる方法や、国際弁理士になることによって得られるメリットなども解説していきます。
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国際弁理士とは?資格があるの?わかりやすく解説
国際弁理士とは、自国の弁理士資格に加えて他の国の弁理士資格を有する弁理士の通称です。
通称であると説明した事からも分かるように、「国際弁理士」という資格は存在しません。
他の法律と同様に、知的財産に関する法律も国や地域によってそれぞれ異なっています。
そのため、これら法律を扱う弁理士資格の取得基準もそれぞれ大きく異なっており、共通の資格とすることが難しいです。
1つの国でのみ弁理士資格を取得している「国内弁理士」の場合には、他国での弁理士業務は提携している「外国弁理士」に依頼して取り組む他ありません。
一方、国内と外国の両方で弁理士資格を取得している「国際弁理士」であれば、各国での手続きをまとめて代理することができます。
国際的な企業活動を行なうクライアントに対しても、手続きの手間やコストを省いて効率のよい仕事を提供することができます。
国際弁理士になるには?
前述したように、国際弁理士となるには複数の国や地域で、それぞれ個別に複数の弁理士資格を取得する必要があります。
日本で弁理士資格を取得することを前提とすると、海外の少なくとも一か国において弁理士資格を取得することが必要です。
世界中にはたくさんの国や地域がありますが、どの国や地域での弁理士資格を取得するのが良いのでしょうか。
以下では、まず海外での弁理士資格の取得時に越えなければいけないハードルについて検討していきます。
言語のハードル
日本以外の国や地域で弁理士資格を取得するためには、基本的にはその国や地域で弁理士試験の言語として定められている言語で試験を受ける必要があります。
英語が得意な方であれば、英語圏での資格取得を目指すことが考えられます。
英語以外にも、例えば、大学等で第2外国語として習得し、堪能な言語がある場合には、その言語を使って弁理士資格を取得することもできるでしょう。
受験資格のハードル
試験を受けるための資格については各国でそれぞれ定めがあり、必要な学歴や経歴等が大きくことなります。
国によっては、資格取得のために大学等で必ず履修しなければいけない科目があったり、数年間の実務経験が求められる場合もあります。
海外の弁理士資格を解説(日米欧韓)
海外の弁理士試験は日本の弁理士試験とどのような違いがあるのでしょうか。
以下では日本の弁理士試験と海外の弁理士試験とを比較してみましょう。
日米欧韓での弁理士試験の比較表
日本 | 米国 | 欧州 | 韓国 | |
受験資格 | なし | 理系の大卒以上就労ビザ等 | 理工系の大卒以上3年間の業務訓練 | なし |
試験構成 | 一次試験(選択式) 二次試験(記述式) 三次試験(面接) | Patent Bar Exam(選択式) | 一次試験(選択式) 二次試験(記述式) | 一次試験(選択式) 二次試験(記述式) |
言語 | 日本語 | 英語 | 英語、フランス語、ドイツ語のいずれか | 韓国語 |
その他注意点 | 弁理士として登録するには永住権が必要 |
次に各国における弁理士試験の詳細な内容について説明します。
アメリカの弁理士になるには
アメリカで弁理士(Patent attorney またはPatent Agent)になるためには、まず日本の弁理士試験に相当するPatent Bar Examに合格し、弁理士としてUSPTOに登録する必要があります。
Patent Bar Examを受験するには、理系の大卒以上の学歴が必要です。
またPatent Bar Examを受験する場合には、アメリカでの就労ビザ等の取得が必要です。
Patent Bar Examの試験時間は合計6時間で、内容は米国特許審査基準等に関する100問の問題に答える多肢選択型の試験となっています。
この試験には、70%以上の正答率によって合格することができます。
なお、アメリカでは試験に合格した後、弁理士として正式登録するには永住権が必要であることに注意が必要です。
永住権がなく、就労ビザ等の一時的な滞在資格しかない場合には制限付き登録となり、独立して弁理士業務をすることはできません。
とはいえ、制限付きの登録であっても、就職した事務所内では他の弁理士と仕事を一緒にするはずですから問題はないとも考えられます。
なお、帰国などによって滞在資格が切れると弁理士資格も失効してしまい、弁理士として再登録するためには再度試験を受けなおす必要があります。
したがって、アメリカの場合、一旦は日本とアメリカの資格をとって「国際弁理士」になったとしても、帰国後はアメリカの資格を失いアメリカ弁理士を名乗ることはできないことがあるので注意です。
欧州の弁理士になるには
欧州弁理士試験に合格して、欧州特許庁に弁理士登録をする必要があります。
欧州では弁理士試験の受験資格として、理系大卒以上の学歴が必要です。
また、欧州の特許事務所などでの3年間の実務経験が必要となり、ある程度の期間欧州に滞在し続ける必要があります。
そのため国によっては就労ビザの維持などが大変な場合もあります。
欧州での弁理士試験は、英語、ドイツ語、フランス語のいずれかでの受験が可能です。
試験の内容は以下の通りです。
プレ試験(一次試験)
法律に関する問題10問と請求項に関する問題10問に答える多肢選択型の4時間の試験であり、70%以上の正答率で合格できます。
本試験(二次試験)
- 法律(5時間)
- 明細書作成(3.5時間)
- OA対応(3時間)
- 異議申し立て(5時間)
上記4科目について記述式の試験を受けます。各科目50%以上の正答率で合格となります。
不合格だった科目のみ翌年以降に再度受験することになります。
韓国の弁理士になるには
韓国で弁理士になるには韓国の弁理士試験に合格して大韓弁理士会に登録する必要があります。
受験資格は日本と同じく特にありません。
多肢選択型の一次試験と論文式の2次試験に合格する必要があります。
各試験の科目は以下の通りです。
・一次試験:特許・実案、商標、デザイン保護法、条約、民法、英語、自然科学
・二次試験:特許・実案、商標、民事訴訟法、選択科目(デザイン保護法又は自然科学)
なお、英語の試験は、TOEICなどの試験結果を提出することで代用可能です。
どの国の弁理士資格が取りやすい?
主要な国での弁理士試験について解説しましたが、この章ではどの国の弁理士資格が取得しやすいかについて解説します。
試験の難易度や言語の観点からはアメリカや欧州か?
日本で公教育を受けた人は原則、中学校などで英語を学んでいます。
そのため、アメリカや欧州といった英語で弁理士試験を受けられる国での弁理士資格の取得が有利であると考えられます。
さらに、アメリカの弁理士試験であれば合格率は比較的高く、日本の弁理士資格保持者であれば1、2回の受験でほとんどの方は合格できます。
ただし、先ほどの章でも説明したようにアメリカでの弁理士試験を受験し資格を維持するには就労ビザ等が最低限必要となってきます。
現地で仕事を得る必要があるために、現地で長く働き続ける覚悟が必要となってきます。
前述したように、アメリカでは、せっかく試験に合格しても就労ビザ等の滞在資格が切れてしまうと資格を失ってしまうことに注意が必要です。
学歴や就労ビザの観点からは韓国か?
アメリカや欧州では理系の大学卒業の学歴等が必要ですが、韓国では日本と同様に受験資格として学歴や実務経験等は求められません。
また、国籍も問われておらず、だれでも弁理士試験を受験することができます。
そのため、受験資格という観点からは韓国での弁理士資格の取得が比較的容易であると言えます。
しかしながら、韓国の弁理士試験は合格難易度がアメリカや欧州と比較すると格段に高いので、その面ではハードルが高いと言えます。
各国の国際弁理士の年収は?年収をあげるには?
国際弁理士となった場合の年収は、各国での弁理士の年収からも影響を受けると考えられます。
弁理士の年収が高い国で弁理士資格を取得すれば、国際弁理士としての年収アップも十分考えられます。
そこで、以下では各国での弁理士の年収について解説します。
なお、以下で挙げる各ウェブサイトに記載の年収は、更新によって変動することをご了承下さい。
アメリカの弁理士の年収
アメリカでの弁理士の平均年収は、フォーブスの記事によると、2017年時点で16万ドル(1ドル=114円換算とすると日本円で約1,800万円)です。
欧州の弁理士の年収
欧州各国のうち、例えばドイツでの弁理士の年収の中央値は、Payscaleによると72,000ユーロ(1ユーロ=138円換算とすると日本円で約994万円)となっています。
韓国の弁理士の年収
韓国での勤務弁理士の年収の中央値は、salary expartによると、97,995,706ウォン(1ウォン=1円換算とすると日本円で約980万円)となっています。
日本の弁理士の年収は米欧韓より低い!?
日本での勤務弁理士の平均年収は、厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」によると約997万円となっています。
各国での勤務弁理士の平均年収や年収の中央値と比べると日本の弁理士の平均年収はあまり高くないようにも見えます。
しかし、弁理士の年収は国によってだけではなく勤務形態によっても大きく変化することが多いです。
例えば、日本における勤務弁理士の平均年収は前述したように997万円程度となっていますが、国際弁理士としての資格を活かして、より待遇の良い職場に転職したり、独立したりすることもできます。
その場合、年収を2000万円~3000万円に伸ばすことも可能であると考えられます。
弁理士の勤務形態と年収との関係について、詳しくは以下の記事もご参照下さい。
関連コラム:弁理士の年収・給料はどれくらい?高収入を目指す方法も
まとめ:まずは日本の弁理士資格の取得を!
ここまで国際弁理士について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
この記事での内容をまとめると以下のようになります。
- 国際弁理士という資格はなく、複数の国で個別に弁理士資格を取得する必要がある。
- 国際弁理士となるには、言語の壁に加えて、各国での受験資格をクリアする必要がある。
- 言語の観点からはアメリカや欧州での弁理士試験、受験資格の観点からは韓国の弁理士試験が考えられる。
- 各国での弁理士資格を取得するだけでなく、これら資格を武器として転職や独立することによってさらなる年収アップが可能である。
日本人、もしくは日本語が母語である方が国際弁理士として活躍するには、日本での弁理士資格の取得がベースとなるでしょう。
各国で法律が異なるとはいえ、日本で弁理士資格を取得しておけば、知的財産に関する法律の基本的な考え方を理解することができます。
そのため、2か国目以降の試験対策において、知的財産関連の学習は比較的容易に行うことができると考えられます。
国際弁理士を目指している方は、まずは母語で勉強・受験することができる日本での弁理士試験を攻略するのが妥当であると言えます。
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