弁理士といえば理系出身者が取得する資格であると思っていませんか。

実は弁理士は文系出身者の方にとっても取得しやすく、また文系出身者だからこそ活躍できる可能性がある資格です。

そこで、今回は実際に弁理士として業務を行なっている筆者が文系出身の弁理士について解説していきます。

また、文系出身の方が気になるであろう弁理士試験の難易度についても解説していきたいと思います。

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文系の弁理士にも需要・求人はある!

弁理士資格の取得を検討している文系出身の方にとって一番の心配は、文系出身の弁理士に本当に需要があるの?という点であると思います。

結論としては文系でも、あるいは文系だからこそ、弁理士としての需要があります

論より証拠で、まずは実際の弁理士の求人情報を見てみましょう。

文系弁理士の就職・転職の実際の求人例

以下に、弁理士の求人の一例として、新居国際特許事務所の募集要項を挙げます。

◼︎新居国際特許事務所 募集要項
対象となる方大卒以上(文系・理系不問)
未経験者歓迎・第二新卒歓迎!入所時点での知識・経験不問です。

「電気・電子・ソフト・機械・材料」分野の研究・開発経験者は優遇
一流の特許技術者を目指す意欲のある方
新居国際特許事務所HPより一部を抜粋して引用 

この募集要項によれば、「対象となる方」の欄には「文系・理系不問」との記載があります。

また、「未経験者可」との記載もあります。実は、このように理系・文系問わず未経験の弁理士を募集している事務所は少なくありません。

しかし「「電気・電子・ソフト・機械・材料」分野の研究・開発経験者は優遇」って書いてあるじゃないか!という文系出身の方の声が聞こえてきそうです。

確かに、このように記載されていると、文系出身の方は不安に思われるかもしれません。

しかし、実は理系出身者であっても自分の専門分野以外の分野については詳しくないことが多いです。

専門分野以外の仕事が回ってきたときには技術内容について教科書を片手に1から勉強することも少なくないんです。

また、以下で述べるように文系「であるからこそ」活躍できる場合もありますのでご安心ください。

文系でも活躍できる弁理士とは?

文系・理系不問とは言っても、やはり理系出身の弁理士の方が就職に有利なのでは?と思われる方もいらっしゃるでしょう。

そこで、この章では文系出身の弁理士であるからこその強みについて説明していきます。

意匠・商標を専門とする弁理士として

弁理士が取り扱う「知的財産権」は、主なものとして特許権・意匠権・商標権の3つが挙げられます。

中でも弁理士の主な業務として一番に思いつくのは特許出願等の「最先端の科学技術を取り扱う仕事」であるかもしれません。

そして、特許出願等に関しては理工系の知識を要するため、文系出身者が活躍するのは一般的に難しいとされています。

しかしながら、弁理士の主要業務としては、他にも意匠(デザインの保護)や商標(ブランド名などの保護)に関する業務もあります。

意匠や商標に関する業務は、科学技術に関する知識が求められることが少なく、文系出身の弁理士にも取り組みやすい業務となっています。

特に商標に関する業務は、理系出身の弁理士が苦手意識を持ちやすく、文系出身の弁理士の方が能力を発揮しやすい業務であるとも考えられます。

法律の知識が豊富である

弁理士は知的財産法という「法律」を扱う専門資格です。

そのため、日常の業務においては常に法律的な思考能力や、法律的な文章の構成の力が求められます。

そのため、大学で法律の知識に触れる機会が多い文系出身者の方が、理系出身者よりも法律家としての下地があることになり、有利であると言えます。

英語力・語学力が高い

弁理士は日本国内における業務のみを担当していると思われるかもしれません。

しかし、実は日常的に世界中の弁理士や弁護士と連絡を取り合って仕事をしています。

グローバル化により、日本国内のお客様が海外で、又は海外のお客様が日本で事業をされる場合の知的財産に関するお手伝いをさせて頂く機会が非常に多いためです。

そこで、弁理士に求められるのが高い語学力です。

日本の弁理士資格のみならず海外の弁理士資格も保有する場合には、代理人として海外の特許庁と直接やり取りをする場合もあり、さらに高度な語学力が求められます。

そのため、例えば大学で語学や文学などを専攻し、その言語を高いレベルで扱うことのできる人材は弁理士として重宝されると言えます。

文系の弁理士は年収が低くなりやすいって本当?

2chなどの掲示板では文系の弁理士の年収は低いと言われていることもあるようです。

文系出身の弁理士であっても、意匠や商標に関する業務でなら活躍しやすいと述べてきました。

しかし、やはり文系出身の弁理士にとって特許に関する業務は難しいと思われ、特許に関する業務という「選択肢」を取りにくくなった結果、年収が低くなってしまう場合もあるのかもしれません。

では本当に弁理士の年収は文系・理系という出身分野によって影響を受けているのでしょうか。

実際には、弁理士の年収は、文系・理系といった出身分野よりは、特許事務所勤務であるのか、企業勤務であるのか、独立するのか等といった雇用形態によって大きな影響を受けていると考えられます。

また、特に特許事務所に勤務している弁理士の年収は、本人のスキルに応じて変動する場合が多いです。

同じ事務所でも新人の場合には年収が低いものの、仕事ができるようになると年収が大幅に増加するということもあります。

たとえ文系出身であっても、弁理士としての経験を積んでスキルを身に付けることによって収入を増やす、より良い条件の職場に転職する、最終的には独立を目指す等高収入を目指すことは十分に可能です。

弁理士資格を活かすことができるダブルライセンスを取得したり、得意な語学力をさらに伸ばしたりして自分の市場価値を高める努力を怠らなければ、さらに高収入を得ることも可能でしょう。

関連コラム:弁理士の年収・給料はどれくらい?高収入を目指す方法も

文系が弁理士試験を受ける場合の難易度・合格率は?

ここまで説明してきたように、文系出身であっても弁理士として活躍し、高年収を狙うことが可能であることはご理解頂けたかと思います。

とはいえ、弁理士として活躍するにはまず弁理士資格を取得する必要があります。

そこで、次に文系出身者にとっての弁理士試験の難易度について解説します。

 弁理士試験において文系出身者は不利?

令和6年度の弁理士試験統計によると、以下のように試験最終合格者の80%以上が理系であり文系は20%未満であるという結果が見て取れます。

◼︎出身系統別 弁理士試験最終合格者

系統人数割合(%)
理工系15681.7
法文系2714.1
その他84.1
191100.0
令和6年度弁理士試験の結果についてより引用

この表からは、理系出身の合格者が圧倒的に多いように感じるかもしれません。

しかし、これはこの記事の最初でも述べたように弁理士は理系出身者の資格であるというイメージが強く、文系出身の志願者がそもそも少ないからに過ぎないと考えられます。

というのも、令和6年度弁理士試験志願者統計によると、弁理士志願者の内、およそ7割は理工系で、文系は2割程度に過ぎないためです。

◼︎出身系統別 弁理士試験志願者

系統人数割合(%)
理工系2,45170.0
法文系77322.1
その他2787.9
3,502100.0
令和6年度弁理士試験志願者統計より引用

さらに以下で見ていくように、試験内容的にはむしろ文系の人の方が有利であるとも考えられます。

 試験科目としては文系の方が有利?

弁理士試験は、短答式筆記試験、論文式筆記試験(必須科目、選択科目)、口述試験からなり、それぞれの試験科目は以下のようになっています。

  • 短答式筆記試験:特許法・実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、条約
  • 論文式筆記試験(必須科目):特許法・実用新案法、意匠法、商標法
  • 論文式筆記試験(選択科目):理工I~V及び法律(弁理士の業務に関する法律)の中からいずれか1つ
  • 口述試験:特許法・実用新案法、意匠法、商標法

以上のように、短答式筆記試験、論文式筆記試験(必須科目)及び口述試験は法律の知識を問うものです。

文系出身者の方が理系出身者よりも特段不利であることはありません。

それどころか自身の専攻や教養科目で法律を学習したことのある文系出身の方は、法律を学習する機会が少ない理系出身者よりも有利であると考えられます。

また、論文式筆記試験(選択科目)には、選択科目として理系科目も用意されていますが、法律の試験を選択することも可能です。

そのため、この試験についても文系出身者にとって特段不利になるものではありません。

法律科目は予備校の対策講座も充実

前述したように弁理士試験の論文式筆記試験(選択科目)では、理工I~V及び法律(弁理士の業務に関する法律)の中から1科目を選択して受験します。

選択科目のうち、理工I~Vの5科目については、専用の講座はほとんどなく自分で過去問を解くなどの対策をする必要があります。

その一方、法律(弁理士の業務に関する法律)は内容が民法であることもあり、司法試験対策用の講座をはじめ、対策講座が充実していて勉強が進めやすい科目であると言えます。

アガルートでは、弁理士試験の論文式筆記試験(選択科目)の専門講座として法律(弁理士の業務に関する法律)の講座を開講していますので、是非チェックしてみて下さい。

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以上に説明したように、弁理士試験は文系出身であるからといって特段難易度が高いものではありません。

逆に文系出身であるからこそ理系出身者よりも合格しやすいという見方もできます。

また、前述したように弁理士は文系出身の方でも活躍することができる職業であり、努力に見合った高収入を得られる職業でもあります。

この記事を読むまでは「弁理士って理系の資格でしょ。」と思っておられた文系出身のあなたも是非、アガルートの弁理士試験講座を活用して、弁理士を目指してみませんか。

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この記事の執筆者

Naoko


京都大学大学院農学研究科修了。


研究者を目指し大学に残ったものの、結婚出産を経てより子育てのしやすい環境を求めて知財業界へ。


特許事務所で特許事務(国内・海外)を3年程経験した後、第3子の出産を機にパラリーガルに転身。弁理士試験に挑戦し、一発合格。


現在、特許事務所で弁理士として活躍。

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