弁理士試験の勉強を始めたものの、どのように学習を進めればよいか分からず悩んでいる人がいるのではないでしょうか。
初めて弁理士試験を受験する場合、どれくらいの時間どのような勉強方法で学習すればよいか、わからないですよね。
そこで本記事では、弁理士試験の勉強方法や、合格に必要な勉強時間を解説します。
短答式試験、論文式試験、口述試験の勉強方法をそれぞれ解説しているため、ぜひ参考にしてください。

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弁理士の勉強法

弁理士試験は幅広い法律知識が問われる試験であり、独学で勉強するのはかなり厳しいでしょう。特に法律科目を全く勉強したことのない理系の方が特許法などの法律科目を独学で勉強するのは非効率です。

受験予備校では、弁理士試験を知り尽くした講師が良質なテキストを使って指導をしてくれますので、効率的に学習するために受験予備校に通うことをおすすめします。

以下では、勉強の進捗度合いによる勉強法について詳しく解説します。

(1) 勉強を始めたばかりの段階

勉強を始めたばかりの段階は初めて習うことばかりであり、何をどう勉強したらよいのか手探りの状態の方が多いと思います。

受験予備校は合格までのスケジュールを立ててくれますので、まずは受験予備校のカリキュラムに沿ってインプット講義をできる限り早く一周するとよいでしょう。

その際、予習は必要ありませんので、復習を重視して進めるようにしてください。勉強を始めた当初は予習をしてもテキストに書かれていることの意味がわからない場合も多く、やる気が削がれてしまうおそれがあるからです。

できる限り早く一周するのは、弁理士試験の全体像を早くつかみインプットを完了させることで、アウトプット中心の勉強にスムーズに移行するためです。

(2) 短答式試験の勉強法

弁理士試験の最初の関門であり、科目数が多いことから効率良く勉強することが必要となってきます。入門テキストでインプットが終わったらすぐに短答式試験対策をはじめましょう。

具体的には、すぐに過去問を解き始めてください。最初は全くわからなくてもかまいません。すぐに答えをみてどんどん進みましょう。その際、間違ったところを短答式試験用テキストや四法対照法文集に書き込んでいきましょう。

過去問10年分を一周できたら、二周、三周と回していきます。その際、確実に正解できた問題についてはやらなくてかまいません。

過去問10年分について、間違ったところを四法対照法文集などにまとめて一元化しつつ、全ての肢が確実に正解できるまで回すことが短答式試験突破のコツになります。

(3) 論文式試験の勉強法

論文式試験は短答式試験と異なり、自分で過去問を解くだけでは上達しません。なぜなら、論文式試験は自分の文章について講師や合格者に見てもらわないと、その文章の書き方が本当に合っているのか自分だけでは判断できないからです。

論文式試験対策として、受験予備校では「答案練習会」(答練といいます)というものを行っているところが多いです。答練というのは模擬試験のようなもので、本番と同じ形式の論文式試験問題を実際の制限時間内に書いた後、合格者の添削を受けるというものになります。答練を受けることで、自分の書き方が良いのか悪いのか合格者の視点で客観的な評価をもらうことができます。

(4) 口述試験の勉強法

論文式試験を突破すると最後の関門である口述試験の対策をすることになります。

口述試験まで到達された方は知識については問題ないレベルになっていて、過去問などを用いて口頭で答える練習を行います。

受験生同士で集まって口述対策をするのもよいでしょう。また、受験予備校や弁理士の会派では、口述試験の模擬試験を実施していますので、模擬試験は必ず受けるようにしてください。

弁理士試験の合格に必要な勉強時間は?

弁理士試験の合格に必要な勉強時間は、3,000時間ほどと言われています。

予備校や通信講座を利用することで、1,000~1,500時間ほどで合格できるケースもありますが、独学で勉強する人は3000時間を目安に考えておきましょう。

特に短答式試験は難易度が高く合格率も低いため、最低でも700時間は勉強時間を確保することが大切です。

論文式試験は最低150時間、口述試験も最低40時間かかるでしょう。

上記の試験ごとの勉強時間は、あくまで最低限必要な時間ですので、人によって勉強時間は異なります。

ご自身の学習ペースなどを鑑みて、試験までの勉強時間を確保しておきましょう。

参考:弁理士の勉強時間は?合格を目指すスケジュールも解説

弁理士の試験科目

令和6年度弁理士試験の結果によれば、最終合格率は6.0%となっています。16人いる受験者のうち、合格できるのはたった1人という超難関国家資格です。

※参考:弁理士試験 過去の試験結果

試験対策が不十分なまま闇雲に勉強しても、合格は難しいでしょう。まずは、試験ごとの特徴をおさえたうえで対策を立てることが何よりも大切です。

弁理士試験には、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」を含めた3つの試験があります。

短答式試験に合格しなければ、論文式試験は受験できません。当然ながら、論文式試験に合格しなければ口述試験を受けることも不可能です。

このように、内容が異なる全てに合格しなければならないことが、弁理士試験が難しいといわれる理由だと考えられます。

※関連コラム:弁理士の難易度ランキング|合格率・勉強時間を他資格と比較

(1)短答式試験

「短答式試験」は、弁理士試験の最初に立ちはだかる試験です。

令和6年度弁理士試験統計によると、短答式試験の合格率は12.8%となっています。

短答式試験は、5つある問題の中から1つを選択するマークシート形式で行われます。試験範囲が非常に広く、細かい知識が要求され苦手とする受験生も多いようです。

短答式試験の試験科目は、下記の7項目となっています。

  1. 特許法
  2. 実用新案法
  3. 意匠法
  4. 商標法
  5. 条約
  6. 不正競争防止法
  7. 著作権法

短答式試験では、合計60問が出題され39点が合格ラインとなっています。

  • 特許法・実用新案法から20問
  • 意匠法・商標法・条約から各10問
  • 著作権法・不正競争防止法から各5問

(2)論文式試験

論文式試験は論述式の試験で、問題文に対して文章で解答します。マークシート形式の短答式試験とは違い、自力で対策するのが非常に難しく合格者に論文を見てもらう必要があります。

論文式試験の試験科目は、「必須科目」と「選択科目」の2種類です。

必須科目は、特許法・実用新案法、意匠法、商標法の4法(特許法と実用新案法はセットで行われます)となっています。短答式試験よりも試験範囲は狭くなりますが、解答分をテキストで表現するしなければならず、問題への理解力が問われます。

選択科目は、理工I(機械・応用力学)や理工II(数学・物理)、理工III(化学)、理工IV(生物)、理工V(情報)、法律(民法)のうちから1科目を選択します。理系の受験生はそれぞれの専門分野、文系の受験生は民法を選択する方が多い傾向です。

ちなみに、令和6年度の論文式試験の合格率は27.5%です。

(3)口述試験

論文式試験に合格したら、あとは最終関門である口述試験を突破するのみです。口述試験は、試験官からの問題に対してその場で答えなければならず瞬時の判断力や臨機応変さが要求されます。

試験科目は、特許法・実用新案法、意匠法、商標法の4法(特許法と実用新案法はセットで行われるため、試験科目としては3つとなります)です。A・B・Cの三段階で評価され、3科目のうち2つ以上「C」を取らなければ合格です。

論文式試験の平均合格率は95.6%で、ほとんどの受験者が無事に合格しています。しっかり試験対策を行えば、合格の可能性は十分にあるでしょう。

しかし、受験者は短答式試験と論文式試験を突破したハイレベルな人ばかりです。合格率が高いからといって対策を怠ると、足元をすくわれる結果になりかねません。

試験科目が免除になる「免除制度」とは

弁理士試験は3つの試験に合格しなければならず、加えて試験科目も多い試験です。

しかし、一定の条件を満たせば試験が免除になる制度があります。ここでは、各試験の免除制度について説明いたします。

(1)短答式試験

短答式試験については、一度合格すればその後2年間試験が免除されます。

また、一定の大学院を修了した人や特許庁で審査官等に従事されている人は試験科目の一部が免除されます。

このうち、短答式試験合格による翌年以降2年間の免除が大きく、論文式試験に集中できるため、まずは短答式試験合格を目指すのがよいといえるでしょう。

免除対象者免除条件免除科目
短答式試験合格者過去の短答式試験に合格した人は、2年間試験が免除されます。短答式試験に合格した年の次の年とその次の年は、短答式試験を受けることなく論文式試験を受験することができます。全部
一定の大学院を修了し、工業所有権審議会の認定を受けた人いわゆる知的財産専門職大学院等で工業所有権に関する単位を修得し修了した人は、工業所有権審議会の認定を受けることにより、著作権法と不正競争防止法以外の試験科目が修了した日から2年間免除されます。特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約
特許庁において審査または審判の事務に5年以上従事した人特許庁の審査官や審判官として審査業務等に5年以上従事した人は、著作権法と不正競争防止法以外の試験科目が免除されます。特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約

(2)論文式試験

論文式試験については、一定の条件を満たすと選択科目が免除となります。特に、理工系出身者は、大学院修士課程の修了により選択科目を免除される人が多い傾向です。

また、情報処理技術者試験や行政書士試験の合格(ただし行政書士は登録が必要)により免除を受ける人もいます。

必須科目を合格しても選択科目で不合格になった場合、口述試験に進むことができずその年は不合格になってしまうのです。

選択科目の免除を受けることは、弁理士の資格取得を目指すうえで大きなメリットだといえます。

免除対象者免除条件免除科目
論文式試験選択科目合格者過去の論文式試験選択科目に合格した人は、永久に選択科目の試験が免除されます。選択科目
修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除認定を受けた人理工系の大学院修士課程や博士課程等を修了した人で、工業所有権審議会から認定を受けた人は、選択科目の試験が免除されます。選択科目
特許庁が指定する他の公的資格を有する人行政書士試験合格者で行政書士登録をしている人や、情報処理技術者試験のうち一定の試験を合格している人は、選択科目が永久に免除となります。選択科目

※関連コラム:弁理士試験の選択科目が免除になる応用情報技術者とは?資格取得のメリット

勉強が難しい、なかなか進まないときは

弁理士試験は短答式試験、論文式試験、口述試験という3つの試験を突破する必要があり、短答式試験から最終合格発表まで約半年を要する長丁場の試験となります。

最新の志願者統計によれば学生や無職の方は全志願者のうち15%以下であり、多くの方が仕事をしながら勉強している試験になります。仕事が忙しいときには勉強のやる気がなくなってしまったり、答練の点数が上がらないこともあるでしょう。

そんなときは受験予備校にご相談することをおすすめします。受験予備校には試験に精通した講師がおりますので、スケジュールや勉強法などについて、個々の状況に応じた正しい方向性を示してくれます。

弁理士試験は市販の基本書等のみでは合格が難しい試験です。受験予備校のカリキュラムに沿ってテキストを活用し、講師の指導を信じて勉強することが合格への一番の近道です。

志願者統計によれば、例年の平均受験回数は4回程度であり、多くの受験生が数年間にわたって勉強していますが、受験予備校に通えば短期合格も夢ではありません。受験予備校をうまく利用しながら合格を勝ち取ってください。

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