資格取得後、特許事務所へ入所する弁理士がほとんどです。なかには、一般企業の知財部門で活躍している弁理士も多くいます。

企業への転職・キャリアを考えるうえで、「部署異動や転勤がある」「本業に注力できない(知的財産管理を一貫して行えるわけではない)」といった点は気になるところです。

そこで今回は、企業内弁理士の役割や転職市場の動向、そして企業で働くメリットを解説します。

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企業内弁理士の役割

企業内弁理士の役割

企業内弁理士に求められる役割は、組織の規模によって大きく異なります。組織規模ごとに、詳しく見ていきましょう。

大企業

多くの弁理士が在籍する大企業では、特許や商標、ライセンス契約などの分野を分担しています。自分が担当する分野の専門性を高められ、豊富な実務経験を積むことができるでしょう。

そのため、大企業においてはゼネラリストというより部門のスペシャリストとしての役割が求められています。

中堅企業

中堅企業では主に、外部の特許事務所に特許の出願を委託しています。特許の出願の一部を自社で行うことや、知財活用のために販路開拓などを行うこともあります。

中堅企業では、企業のありとあらゆる知財戦略に携わることから臨機応変な対応力や判断力が必要です。

小規模・零細企業

知財に関する知識やノウハウを持つ人が少なく、弁理士は本業以外の業務に横断的に携わることがあります。

企業内弁理士としての仕事は商標案件がメインです。特許出願は、外部の特許事務所に委託することがほとんどで企業の知財窓口としても活躍できます。

このように、企業内弁理士の役割は企業の規模により千差万別です。担当業務及び役職に応じた成果が求められるという点については、どの企業にも共通しています。

企業で働く弁理士(企業内弁理士)は転職が難しい

企業内弁理士 転職

まず、弁理士資格を取得後に、他の職種から知財を管轄する部署へ転職することは容易ではありません。

日本弁理士会の会員分布を見ると、2024年2月29日時点における弁理士の会員数は11,767名となっています。このうち、企業内弁理士として活躍しているのは約3,000人ほどです。アメリカの企業内弁理士と比較すると、2分の1以下の水準にとどまっています。

※参考:国内外における企業内弁理士に関する統計と企業内業務の実態

日本の企業内弁理士が少ない理由として、「競争倍率が高い」「組織規模や配属ポジションによって業務内容が異なる」などが挙げられます。

競争倍率が高い

企業内弁理士の主な配属先は、知的財産権に関する業務を扱う知財部です。そもそも、知財部のある企業自体が少なく競争倍率が高くなります。

知財部のある企業は、パナソニックやソニー、日立といった大手企業で採用募集人数も少ない傾向です。

関連コラム:弁理士は就職が難しい?主な就職先と職探しで成功しやすい人の特徴を解説

ポジションや組織規模により担当する業務内容が異なる

一概には言えませんが、企業内弁理士は、総務部や経理部あるいは知財とはあまり関係のない部署に配属される可能性があります。必ずしも、弁理士の資格を活かせる環境で働けるとは限らないようです。

実務経験を積んでスキルを磨きたい、専門性を極めたいと考えている方にとって、企業勤めはやりがいを感じにくいかもしれません。

弁理士としての知識を最大限に発揮するのであれば、まずは特許事務所で専門性を身につけましょう。

経験が豊富な弁理士は、即戦力として重宝され希望部署で働ける可能性が高くなります。

弁理士が企業で働くメリット

企業内弁理士 メリット

「新たなキャリアを構築できる」「優秀な弁理士との人脈が広がる」など、弁理士が企業で働くメリットをお話します。

年収がアップする

国税庁が発表している「令和4年分民間給与実態統計調査結果」によれば、一般企業に勤めるサラリーマンの平均年収は458万円となっています。

弁理士の平均年収997万円と比較すると、500万円以上の年収差があることがわかります。

弁理士資格を活かせる仕事に就くことで、年収アップが期待できます。趣味を楽しんだり、将来に向けて資産を運用したり、自由に使えるお金が増えれば暮らしがさらに豊かになります。

関連コラム:弁理士の年収・給料はどれくらい?高収入を目指す方法も

新たなキャリアを構築できる

知的財産のエキスパートである弁理士は、司法書士や行政書士などの士業と並ぶ難関国家資格です。

勤続年数が長ければ、担当する業務の量・質が上がりスキルもレベルアップしていきします。

社内の知財部への異動や特許事務所・他の企業知財部への転職など、新たなキャリアを構築できるかもしれません。

優秀な弁理士とのつながりができる

多くの企業では、働く弁理士との交流を深める親睦会、スキルアップのための勉強会などを多数開催しています。優秀な弁理士とのつながりが増えると、ビジネスチャンスの機会にもなります。

また、自分以外の活躍を知ることは刺激にもなり、モチベーションアップにもなるのではないでしょうか。

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