弁理士試験の勉強のために用意すべき書籍の一つとして「青本」という名前を聞いたことがあると思います。

しかし実際には青本をどのように勉強に使えばよいのか悩んでおられる方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では弁理士試験の勉強における青本の重要性や、青本の効果的な活用方法について解説します

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青本とは?:特許庁編集「工業所有権法逐条解説」のこと

※引用:amazon

弁理士試験における青本は一般的に、「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」のことを指します。

特許庁総務部総務課制度審議室が編集し、一般社団法人発明推進協会が発行しています。

この青本は、特許法、実用新案法、意匠法及び商標法、各法律の施行規則、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律並びに工業所有権に関する手続き等の特例に関する法律を収録した2000ページ以上に及ぶ分厚い書籍となっています。

青本は、弁理士試験の主要な試験科目となっている各法律について、条文ごとに特許庁による公式の解釈を詳細に解説した書籍です。

弁理士試験の勉強において非常に重要な書籍であることは間違いありません。

弁理士試験対策での青本の読み方・使い方を弁理士が解説!

青本は、特に勉強を始めたばかりの初学者の方にとっては、あまりに分厚く難解であり、どうやって勉強に使ったらよいか途方にくれてしまうことと思います。

そこで、この章では実際に青本を活用して弁理士試験に短期合格した筆者が、青本の効率的な使い方を具体的にご紹介します。

まずは条文に親しむためのツールとして活用

弁理士試験の勉強で最も重要なのは、とにかく条文に慣れ親しむこと。

はじめは条文が読みにくく分かりにくいと感じると思います。

しかし条文の一語一語を理解しながらすらすらと読むことができるようになれば弁理士試験の合格は近いと言えるでしょう。

弁理士試験の勉強をしている間は、青本を常に持ち歩いて隙間時間に少しでも条文と触れ合う時間をつくってみましょう。

始めは理解できなくても大丈夫です。

参考書やテキストを読んでいる時や予備校の講義を聞いている時に条文が出てきたら、必ず自分で青本の条文を確認する癖をつけておきましょう。

そうすることで、無理なく条文に触れる機会を増やすことができると思います。

電子版ではなく紙の青本を使う場合には、持ち運びが大変だと思いますので、気軽に勉強ができるサイズに分冊しておきましょう。

筆者の場合は購入した青本を自分で3冊に裁断してマスキングテープなどで簡易製本して使っていました。

書き込みで頻出条文を抽出する

弁理士試験の勉強として過去問に取り組む方も多いと思います。

中でも短答試験の過去問と一緒に青本を使うと勉強の効率を大きく向上させることができるでしょう。

青本には、前述したように非常にたくさんの条文が掲載されています。

しかしながら、これら条文のなかでも試験に良く出題される頻出条文は実はそれほど多くありません。

そこで、過去問一問一問について、いちいち青本の該当条文のページを開いて、その条文にマークをつけるようにしましょう。

このマークのつけ方がとても重要です。

条文全体に丸ごとマークをつけるのではなく、その問題で問われている条文の中の1つのワードだけを選んでマークをつけるようにしましょう。

マークはなんでも良いですが、例えば、1つのワードに傍線を引き出題年と問題番号等を記入するなどすれば良いと思います。

この作業は、弁理士試験に合格するために求められる力の一つである、問題文の内容から何が問われているのかを瞬時に正確に把握して回答する力を養うことができる非常に重要な作業。

最初は大変だと思いますが、分からないながらもこの作業を繰り返しているうちに、どの条文が頻出条文であるのかだけでなく、その条文具体的にどの部分の知識を問われているのかがだんだん見えてくるようになるでしょう。

筆者の場合には、短答過去問10年分について問題集の解答を見ながら、前述した作業を行なってきました。

そうすることで、問題文で何を問われているのかを理解できるようになり、その後は過去問を自分で解くことができるようになりました。

この作業は青本ではなく他の条文集を使って行うこともできますが、筆者が主要な条文集を4冊ほど購入して全て試してみた結果、青本がもっとも余白が大きく使いやすいことが実証済みです。

条文の場所がわかりにくく、条文を探すのに時間がかかるという方は、青本をペラペラとめくった時に今どのあたりかが分かるようにページ上部に条文番号を記載しておいても良いでしょう。

解説部分を色分けしてオリジナルテキストを完成させる

過去問をしながら条文にマークをつける習慣を毎日続けていると、よく見る条文と全然出てこない条文があることが目に見えて分かってくると思います。

そんな傾向が見えてきたら、よく見かける条文の解説部分も読んでみましょう

すでに解説部分にマークがついている条文もあるかもしれませんが、解説部分にはとても大事なことがたくさん書いてあります。

しかし、解説部分は文章量が多いので、そのままではどこに何が書いてあるのか分かりにくく読みにくいと思います。

そこで、青本をより読みやすくするために、カラーマーカーを数色用意して、重要な箇所にはその内容(誰が、いつ、何をを、「必要がある」のか「することができる」のか、その結果どのような効果が生じるのか)に応じて自分のルールを決めて、赤や黄色、青、緑などの色をつけて読みやすい自分だけのオリジナル青本にしてみましょう

また、過去問などを勉強している際に気が付いたことをメモとして記入し、青本に勉強した内容をすべて集約しておくことによって、青本さえあれば大丈夫という状態にしてしまいましょう。

ここまでくると、あなたの青本はもはや合格に必要な情報をもれなく詰め込んだ最強の条文集に成長しているはずです。

以上、説明したように、青本は使い方さえ間違えなければ非常に強力な勉強ツールとなります。

ぜひ上手く青本を使って弁理士試験に短期合格するだけではなく、合格後のキャリアにも生かせる本物の知識を培いましょう。

「青本はいらない」が嘘である3つの理由

ここまで青本を使った効率的な勉強方法について解説してきましたが、中には弁理士試験の勉強に青本は不要なのではないかと感じる方もおられると思います。

そこで以下では、弁理士試験の勉強に青本が不要である理由として代表的なものを挙げて、これらについて検討してみたいと思います。

理由1)青本を勉強していたら時間がかかりすぎる

よく青本を通読するのがよいと聞くけれど、こんなに分厚い本を読んでいたら時間がかかり過ぎるのではないか、という意見もあるかと思います。

確かに理解が難しい内容をただひたすらに通読するのはつらいですし、時間の無駄なのではないかと心配になる気持ちもよく分かります。

しかし、ただ通読するのではなく、参考書の内容や講義の内容、過去問の内容に絡めて青本の該当箇所を読むようにすれば、試験に頻出している条文について正確な内容を集中的に勉強することができるので非常に効率的な学習ができることでしょう。

理由2)テキストの内容を勉強すれば十分である

弁理士試験に出題されそうなところは予備校等が発行している参考書やテキストにまとめられているのだから、わざわざ青本を勉強する意味はないのではないか、という意見もありそうです。

確かに参考書やテキストは、過去の試験問題を研究してしっかりと作られているものが多く効率的な学習をするために適した書籍です。

しかし、学習効率を高めるためにコンパクトな内容にしようとするとどうしても内容に抜けが出てしまうという問題があります。

この点、青本は特許庁が発行している公式テキストであり最も正確で抜けのないものとなっています。

この青本に自分でメモや色分け等の加工をすることによって、各自が最も使いやすい完璧なテキストが出来上がることは間違いありません。

理由3)初学者が取り組むには難しすぎる

確かに初学者のうちはなかなか青本の内容を理解することは難しいと感じるかもしれません。

しかし、前述したように青本は特許庁が発行する弁理士試験の公式テキストですので、理解できないからと言って青本を使わないのはもったいないことです。

青本は、勉強が進んだ受験生であっても容易にその内容を理解できるものではありません。

その一方で、内容を理解するどころか、青本をすらすら読めるようになる頃にはもう弁理士試験に合格していることでしょう。

青本の入手方法は現状主に3つ

青本は主に以下の方法で入手することができます。

特許庁HPからPDF版をダウンロードする

青本は、特許庁HPから無料で全文をダウンロードすることができます。

この方法によれば、青本を無料で入手することできますし、電子データなのでかさばらないという利点があります。

一方で、製本された条文集に比べて条文を探すのに時間がかかる、気軽に書き込みがしにくい等のデメリットも。

書籍版を購入する

書籍版の青本は書店やインターネット通販等で購入可能

書籍版の青本は、気軽にいつでも書き込みができ、ダウンロード版に比べて条文を探しやすいというメリットがあります。

一方で、購入にお金がかかってしまうことや、重くて持ち運びが大変というデメリットがあります。

前述したように分冊すれば持ち運びも楽になりますので、できれば書籍版を購入するのがおすすめ。

アプリをダウンロードする

『六法』というアプリ内で、現在の最新版である22版が読めます。

アプリのダウンロードは無料ですが、青本を読むためには480円のアプリ内課金が必要です。

メモを書き込んだりマーカーを付けたりなど、学習に役立つ機能が充実しています。

App Store(iOS)六法
Google Play(Android)なし

まとめ

この記事では以下の内容を解説してきましたがいかがでしたでしょうか。

  • 青本とは「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」のことである
  • 青本を最強のテキストとして使いこなすための具体的な方法
  • 青本を勉強に使わないのは非常にもったいない!
  • 青本は無料ダウンロード又は書籍購入によって入手できる

青本を上手く使ってぜひ効率的な弁理士試験対策をしていただきたいと思います。

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アガルートの講座と青本とをうまく活用して、弁理士試験最短合格を目指しましょう。

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この記事の執筆者

Naoko


京都大学大学院農学研究科修了。


研究者を目指し大学に残ったものの、結婚出産を経てより子育てのしやすい環境を求めて知財業界へ。


特許事務所で特許事務(国内・海外)を3年程経験した後、第3子の出産を機にパラリーガルに転身。弁理士試験に挑戦し、一発合格。


現在、特許事務所で弁理士として活躍。

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