ビジネススクール留学といえば、ハーバードやスタンフォードといったアメリカのトップ校をイメージする方が多いでしょう。

日本人MBA留学経験者においてもアメリカのMBA卒業生が多いのは事実です。

欧州にもトップクラスのMBAは存在します。

欧州の有名なMBAとして思い浮かぶのは、イギリスのオックスフォードやケンブリッジ、或いはフランスのINSEADでしょうか。

フランスではINSEADと並んでHECも欧州の代表格なのはご存じでしょうか。

今回ご紹介するHECビジネススクールはフランスの首都 パリにある私立の教育機関で、そのMBAプログラムは、常に世界のトップ20にランクされています。

リーダーシップ、起業家精神、国際性に焦点をおいており、領域としては、特にラグジュアリーマーケティングやブランドマーケティングに強いスクールです。

このコラムでは、欧州MBAの代表校の一つである仏HEC Paris ビジネススクールについて解説していきます。

このコラムでHECビジネススクールのMBAについてわかること
  • どのくらい難易度が高いのか
  • 特徴や学費
  • 卒業後のキャリア・年収レベル
  • 入試内容

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HECビジネススクールの特徴

まず特徴として挙げられるのは、HECParisMBAフルタイムプログラムは16ヶ月で卒業できることとリーダーシップ教育に注力している点です。

アメリカのMBAプログラムが通常2年であることと比較すると、日本からの留学生には時間的、経済的負担が軽減されるプログラムと言えます。

また2017年のTimes Higher Education Alma Mater Indexによると、フォーチュン・グローバル500企業のCEOを欧州のどの大学よりも多く排出しています。

卒業生のうち4,000人近くが現在CEOやCFOとなっていたり、自分の会社を起業しています。

HECパリMBAでは、ヨーロッパ中のスクールが参加するMBAのオリンピックとも言われる大規模なスポーツ大会(MBAT)の主催や士官学校での訓練など、ユニークで実践的なリーダーシップ学習の機会も取り入れています。

HECビジネススクールはどんなところか

HEC Parisは、フランスの研究機関、ハイテク企業、スタートアップを結びつけるためのパリ・サクレイ・イノベーション・クラスターに立地しています。

HECのフルタイムMBAでは93%が留学生で構成され、卒業後にグローバル市場でリーダーとして活躍するために、国際的なネットワーク構築や多様性のある環境で学ぶことができます。

小規模クラスの上、8割前後の学生はキャンパス内住居に住むため近しいコミュニケーションを持つことが可能となり、多彩な経験を経てきた学生からの学びも少なくないでしょう。

授業は全て英語で行われますが、修了には母国語・英語に加えてもう一つの言語を学ぶ必要があります。

このためフランス語の語学クラスを通じて、フランス語力を身に着けることも可能です。

フランス語以外のイタリア語や中国語を第二外国語として選択することも可能です。 

HEC Paris MBAはパリの中心部から17キロ離れたキャンパスにあり、独自のシャトー(貴族の館のような建物)を保有しており、そこで食事もできます。

HECビジネススクールで学ぶことでどのくらいキャリアアップに貢献してくれるのか

HEC Parisはフランスはもちろんの事、欧州での知名度が高く、欧州企業への就職に強いビジネススクールとして有名です。

もちろんキャリアアップにも貢献してくれるでしょう。

卒業後の平均年収については、FinancialTimesの調査によると、$172,393(2023年3月のレートで約2200万円)です。

ほぼ同ランクのMITスローンやシカゴ・ブースが$200,000を超えていますので少し見劣りがしますが、他の欧州の上位校である英ケンブリッジやスペインIEよりは高い数字ですので、キャリアアップに十分期待できる額ではないでしょうか。

HECの強みのある領域は、マーケティング及びファイナンスであり、特にラグジュアリーマーケティングとブランドマーケティングは世界的な評価を誇っています。

HECパリMBAの卒業生は、セクター、機能、場所を問わず、キャリアチェンジを行うケースが多く、2019年の卒業生では、80%がこれら3つのうち少なくとも2つを変更し、39%が3つすべてを変更しました。

企業がキャンパス訪問してセミナーを開くことも多く、キャリアサポートとしてCareer Centerによる履歴書の書き方やネットワーキングの仕方が全学生の必修となっています。

HECビジネススクールのクラスプロフィール

HECビジネススクール MBAの入学者数は2957人で合格率は18.9%です。

他のトップ校の合格率はだいたい20%前後であることを考えるとやや狭き門と言えます。

HECによれば、他の欧米のトップ校であるシカゴ・ブース、MITスローン、ロンドン・ビジネス・スクールと比較すると、より厳しい選考基準であるとしています。

入学者数については、アメリカのトップ校のハーバードMBAの入学者数が約1000人といった数字に比べると1/3程度のクラス規模です。

同じ欧州のスペインのIESEが300名程度のクラス規模なので、こちらとは類似した規模感となっています。

学生の国籍分布は例年50ヶ国以上に及んでおり、海外学生比率も90%以上と国際的な学習環境と言えるでしょう。

フランス人の占める割合は1割程度で、北中米‐南米、欧州‐アフリカ、アジアからの留学生がそれぞれ1/3ずつと、多様でバランスのとれた学生の国籍構成となっています。

HEC MBAは学生の専攻や職歴も多彩であり、他のトップ校と比べindustry分野の経験を持つ学生が多いことも特徴として挙げられます。 

また、入学時の平均年齢が30歳とやや高めです。

年度2024
受験者数2957
入学者数281
合格率18.9%
女性比率34%
留学生比率93%
平均GPA
平均年齢30
平均勤続年数6
GMAT平均スコア(又は中間値)690
GRE平均スコア(又は中間値)
TOEFL iBT/ IELTSスコア最低要件100/7

HEC paris MBAのランキング

主な評価機関のHECビジネススクール MBAのランキングです。ほとんどの評価機関においても例年20位以内に入っています。

評価機関順位
FT17
QS4
Forbes2
EDUNIVERSAL2

HEC paris MBAの入試内容

HECビジネススクール MBA出願に必要な書類・プロセスについてまとめました。

入学時期は1月と9月があります。受験プロセスは5週間かかるとしています。

また最低2年の勤務経験を受験資格として求めています。

  • トランスクリプト(学業成績、GPA)
  • TOEFL/ELTS等 テスト結果
  • エッセイ
  • 推薦状 2通
  • アプリケーションフォーム(受験申込書ーオンライン申請)
  • GMAT or GRE テスト結果
  • 面接

ここでは、日本の入試ではなじみが薄いトランスクリプト(GPA)、エッセイと推薦状について解説していきます。

テストスコアの難易度については後のセクションで詳しく説明しますので、そちらを参照してください。

トランスクリプト

大学での成績(GPA)を提出します。

海外MBAでは日本と異なり偏差値方式はありません。

GPAの計算方式はこちらで解説していますのでご参照ください。

関連コラム:MBAで必要なGPAは?計算方法や国内海外の目安、足りない時の対策方法を徹底解説

エッセイ

志望動機・自己アピールを記載するもので出願において主要な評価対象となっています。

なぜMBAを志望するのかに加え、なぜHEC MBAか? 自分のキャリアにどう紐付けるか?等々、学校側は出願者が期待するレベルに見合うか、出願者がクラスで貢献できるかを判断します。

面接対策にもなりますので、しっかり自分の経歴の棚卸をここで行ってみてください。

 推薦状

大学の指導教授よりも、上司など会社関係からの推薦状が望ましいとされています。

英語で作成する必要があります。

 MBAの応募書類や受験資格についてはこちらのコラムでも解説していますのでご参照ください。

関連コラム:MBA留学とは?費用や受験資格、適齢について解説

HECビジネススクールの学費

HECビジネススクールの学費は、€87000(2023年3月のレートで約1250万円)です。

ここに生活費がかかり、HECによると家賃、テキスト代、食事代、交通費等で、卒業までにかかる費用は€24825(2023年3月のレートで約360万円)と試算しているので、総コストとして約1610万円と見積もれるでしょう。

16ヵ月のプログラムのためトータルコストは、アメリカでは一般的な2年制の学校よりも総額として低額になるのは事実です。

日本人卒業生のブログを参照すると、HECを受験した理由にランキングと学費とを勘案した上でのコストパフォーマンスの良さを挙げている人もいましたので、特に私費で留学を考えている方などは検討に値するスクールではないでしょうか。

HECビジネススクールの難易度は? 

HECビジネススクールの入試の難易度について解説します。

GPA (学業成績)

HEC MBAの合格ラインは公表されていませんが、HECのアドミッションオフィスのディレクターは、GPAは重要視していないと発言しています。

ただしGMATやGREのスコアが低い場合には参照するとも述べており、やはり難易度は高いと言っていいでしょう。

参考としてスペインの有名校のIESEの合格者の平均GPAは3.2です。

日本の大学生の GPAの平均は、2.4〜2.8程度と言われていますので、優秀な成績が求められています。

これに届かない場合でも、GMATなどのテストスコアやエッセイの内容でカバーできるとのことなので、学業成績があまり良くない場合は他でカバーしていきましょう。

GMAT/GRE

GMATかGREのスコア提出が必要で、いずれの試験にも優劣はありませんが合格者のGMATスコアの合格者平均が690ですので、オックスフォードといった欧州のトップ校レベルと同等の数字です。

難易度は相当高いと言っていいでしょう。

GREについては合格ラインは不明ですが、同じスペインのトップ校のHECSEの合格ラインがVerbal/ Quant双方で143-170ですので参考にしてみてください。

ELTS / TOEFL 等

TOEFL iBT/IELTS スコアが、100/7以上が推定合格ラインであり、難易度は高いです。

英語のコミュニケーションに不自由がないレベルの英語力が求められているといえます。

英語要件は、ケンブリッジMBAやハーバードやスタンフォードといったアメリカのトップ校と同レベルの難度です。

以下にHECが要求している最低点をまとめます。

スコア結果は2年以内のものでなければなりません。

TOEFL iBT 100、ペーパーの場合 600
TOEIC 340(Speaking & Writing)、850 (Listening & Reading)
IELTS 7.0(各パートで6.5以上)
ケンブリッジ英語検定
(First、Advanced、Proficiency、Business)
185
各パート 176点以上
PTE 72

HECでは他校より多くの英語テストスコアを受け付けています。

TOEFL、IELTSに加え TOEIC, IELTS、 Cambridge English Exams や PTEも可としています。

ただ多くの受験生は他校と併願されると思いますので、TOEFLやIELTS受験が一般的にはお薦めです。

他の志望校の要件を確認してからどの英語テストを受けるか検討することで効率的に時間を使ってください。

日本でHECビジネススクールについてもっと詳しく知りたいなら?

HECビジネススクールの MBAを受験するにあたり、自分に合っているか事前に研究することは合格のカギとなります。

日本でHECビジネススクール MBAについて情報収集できるサイトをまとめました。

HECビジネススク―ル公式サイト

MBA programs | HEC Paris

HECの最新の受験要件についてはこちらの公式サイトで確認しましょう。

キャンパス訪問やオンラインセミナーの登録もこのサイトからできます。

非公式日本人向けHEC MBAサイト

HEC Paris Full Time MBA Program

日本人在校生が運営している非公式サイトです。

カリキュラムや学校生活、受験体験記について日本語で読むことができます。

実際の留学生活をイメージしやすいサイトです。

まとめ

欧州のMBAプログラムは、ハーバードやスタンフォードといったアメリカのトップ校と比較すると、残念ながら日本での知名度は高くありません。

また欧州の中でもイギリスなどと違い非英語圏ですので、ハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。

しかしながら世界的に評価が高く、ランキングでも毎年上位に入っているHECビジネススクールの国際的で多様性のあるクラスで学ぶことは、キャリアを積む上でも他では得難い経験を得ることができるでしょう。

HEC合格にはGMATやGREといったテストスコアの結果はもちろん重要ですが、決定的なものではありません。

受験者の性格、モチベーション、達成したい目標、リーダーシップ能力、コミュニケーション能力も考慮されます。

エッセイラィティング等の受験対策を通じて、自分の価値観と将来の目標にしっかり向き合う良い機会としてHECビジネススクールの MBAに挑戦してはいかがでしょうか。

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この記事の執筆者

斉藤りか

慶応義塾大学経済学部卒業。外資IT企業に就職後、ボストン大学経営大学院修了(MBA取得)。

帰国後、ITベンチャーや米系ハイテク企業でマーケティング・ビジネス開発に従事。

その後、アメリカ大使館等各国大使館の商務官に転じ、海外企業向けのビジネスコンサルティングに携わる。