ビジネススクール留学といえば、アメリカを思い浮かべる方が多いでしょう。

トップMBAと言えばハーバードやスタンフォードといったアメリカの大学の知名度が高く、日本人MBA留学経験者においてもアメリカのMBA卒業生が多いのは事実です。

欧州にもトップクラスのMBAは存在します。イギリスの有名大学の双璧は、ケンブリッジとオックスフォードです。

併せて「オックスブリッジ(Oxbridge)」と呼ばれており、最難関校として知られています。両校とも800年以上の歴史を持ち、多くの文化人やエリートを輩出しています。

このように長い伝統を持つオックスブリッジですが、MBAコースの開講は1990年代とアメリカに比べると後進の学問分野です。

では、英国の伝統的な学校でMBAを学ぶ優位性とは何でしょうか?

イギリスMBAの代表格であるケンブリッジMBAについて解説していきます。

このコラムでケンブリッジ大学のMBAについてわかること

  • どのくらい難易度が高いのか
  • 特徴や学費
  • 卒業後のキャリア・年収レベル
  • 入試内容

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ケンブリッジMBAの特徴

ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール( Cambridge Judge Business School)は、イギリスのケンブリッジ大学の経営大学院です。通称はジャッジ(Judge)。評価機関からも高い評価を受けています。

ケンブリッジの大きな特徴3つを下記にまとめました。

「アメリカMBAではなく欧州MBA、その中でもなぜケンブリッジか?」という視点は、志望動機として重要な評価材料となりますので、参考にしていただければ幸いです。

中世からの歴史を持つ世界屈指の名門大学で多角的な視点を得られる

欧州では、INSEAD(仏)、IMD(スイス)など、トップMBAも多くあります。

その中でも、ケンブリッジが一線を画しているのは、伝統と歴史を持つ名門大学において他学部と交流を通じて、MBAの枠を越えた経験・学びを得られることです。

例えば、技術イノベーションや起業に強みを持つケンブリッジでは、著名な起業家の講義や工学部学生とビジネスアイデアを作成する授業があり、投資家が出席するビジネスコンペ等も開催されます。

また、ケンブリッジ大学の産学連携機関の一つであるCambridge Enterpriseや、ハイテク・ベンチャー企業とも強い結びつきを持つのも大きな特徴です。

このように、通常の授業においても起業家や経営者、政治家などに加え、社会学・新興国研究といった様々な領域の教授をゲストスピーカーとして招くなど、多角的にビジネス課題を捉える姿勢が重視されている点が大きな特徴と言えるでしょう。

カレッジ制度を通じてコミュニケーション能力を向上できる

ケンブリッジ大学は、イギリスの伝統であるカレッジ制度を取っています

カレッジ制度では、学生は所属学部とは別にカレッジにも所属する制度です。

カレッジは生活コミュニティ的なもので、映画「ハリーポッター」のスリザリンやグリフィンドールをイメージするとわかりやすいと思います。

カレッジで催されるフォーマルディナーは、さながら上流階級の社交場のようです。MBA学生もタキシードやロングドレスを着用して参加します。

このようなカレッジのイベントでは、普段話す機会のない異なる分野の教授や学生を相手に社交的に会話をしなくてはならず、英語のコミュニケーション能力向上の貴重な機会となるでしょう。

マジョリティが存在しない国際色豊かなクラスで学べる

ケンブリッジMBAでは、人種のマジョリティが存在しない多様性のある環境で、国際的な視点を養うことが可能です。

ケンブリッジでは参加学生の国籍が40数ヵ国にも登り、国際色豊かなクラスで学ぶことが可能です。このような国際性は日本では得がたいもの。

またアメリカ人がクラスの主流となる傾向が多いアメリカMBAと差異がある環境と言えます。

この国際性は卒業後も貴重な財産となるでしょう。最新の各国業界動向や現地有識者とのコンタクトを取る上で、MBA在籍中に築いたネットワークや信頼関係が大いに役立つことでしょう。

ケンブリッジ MBAで学ぶことでどのくらいキャリアアップに貢献してくれるのか

2021/22年度MBAクラスの就職実績は、卒業後3ヶ月以内にクラスの求職者の94%が就職しており、MBA取得後の平均年収は75198ポンド(2024年3月のレートで約1430万円)となっています。

この数字は、ケンブリッジMBAが企業から高い評価を得ていることを示しています。

分野としては、戦略コンサルティング、インターネット/eコマース、テクノロジー、フィンテックが主な就職先です。

特にコンサルティング分野では、MBA 2020の求職者の4分の1がこの分野に進み、30%が金融に進んでいます。加えて、3%が非営利セクターに進み、9%が卒業後すぐに起業しています。

給料アップなど企業でのキャリアアップを目指す方はもちろん、NPOや起業家を目指す方にもケンブリッジMBAでの学びはキャリア形成に貢献できると言えます。

ケンブリッジMBAのクラスプロフィール

ケンブリッジMBAの受験者数は公開されていません。合格者数は例年約200人程度です。合格率も非公開です。

アメリカのトップ校のハーバードMBAの入学者数が約1000人、スタンフォードが約400人といった数字に比べると、この合格者数は少数精鋭と言えるでしょう。

留学生比率も不明ですが、学生の国籍分布は46ヶ国に及んでおり国外からの学生も少なくない比率を占めていると思われます。

年度2023
受験者数
入学者数226
合格率
女性比率42%
留学生比率- 
平均GMAT
平均年齢29
平均勤続年数6
GMAT平均スコア(又は中間値)682
GRE平均スコア(又は中間値)
TOEFL iBT®/IELTS スコア最低要件

ケンブリッジMBAのランキング

主な評価機関のケンブリッジMBAの2024年ランキングです。どの評価機関においても高い評価を得ていることがわかります。

評価機関(Global)順位
FT9
QS4
Bloomberg9

ケンブリッジMBAの入試内容

応募者は以下の条件を満たしている必要があります。

  • 4年制大学の学位またはそれに相当する学位
  • 最低2年間の就業経験

参考:https://www.jbs.cam.ac.uk/programmes/mba/apply/

出願書類

出願に必要な書類です。

応募書類を提出し、審査を受けた後、面接を行う場合があります。

  • トランスクリプト(学業成績、GPA)
  • GMAT/GRE テスト結果
  • TOEFL®/IELTS テスト結果
  • エッセイ
  • 推薦状

ここでは、日本の入試ではなじみが薄いトランスクリプト(GPA)、エッセイと推薦状について解説していきます。

テストスコアの難易度については後のセクションで詳しく説明しますので、そちらを参照してください。

トランスクリプト

大学での成績(GPA)を提出します。

ケンブリッジMBAの合格ラインのGPAは3.0以上とされていますが、3.3は欲しいところです。

極めて高いとは言えない数字ですので、普通の成績がとれていれば大丈夫でしょう。海外MBAでは日本と異なり偏差値方式はありません

GPAの計算方式はこちらで解説していますのでご参照ください。

エッセイ

志望動機・自己アピールを記載するもので出願において主要な評価対象となっています。

なぜMBAを志望するのか?に加え、なぜケンブリッジMBAか?自分のキャリアにどう紐付けるか?等々、学校側は出願者が期待するレベルに見合うか、出願者がクラスで貢献できるかを判断します。

ケンブリッジMBA出願におけるエッセイの主な質問内容を紹介します。

  • MBA取得後のキャリアプランについて、短期的・長期的なキャリア目標は何ですか?また、そのためにケンブリッジMBAはどのような役割を果たしますか?
  • しなければならなかった難しい決断について説明してください。そこから何を学び、その結果どのように変わりましたか?
  • チームでプロジェクトに取り組んだときのことを教えてください。その経験から何を学び、現在ではどのようにアプローチを変えていますか?
  • 18歳の自分に何か一つアドバイスができるとしたら、それは何ですか?

推薦状

上司からの推薦状が1通必要です。

大学の指導教授や親戚などの推薦状は受け付けていません。

以上で提出された願書はケンブリッジMBAアドミッションオフィスにより審査され、面接に進むかどうかが決定されます。

MBAの応募書類や受験資格についてはこちらのコラムでも解説していますのでご参照ください。

ケンブリッジMBAの学費

イギリスの大学の良い点は、アメリカと違って期間が短く1年で卒業できることです。

学費も生活費もその分安く済むので私費留学の方にとっては魅力ですね。

 ケンブリッジ大学MBAの2022-23年度の学費をまとめました。

学費(年)£69,000(+申請料£165)
卒業までの生活費概算£18,625

出典 :ケンブリッジ大学公式サイト Tuition Fee

ケンブリッジ大学MBAの学費は、2024年3月現在のレートでおよそ1,320万円です。生活費が約355万円ですので、卒業までの総費用は約1,675万円

欧州トップ校の中では、平均的な学費となります。

ケンブリッジMBAの難易度は?

ケンブリッジの入試の難易度について、GPA、GMAT、GREやIELTS、TOEFL®などのスコアがどのくらい必要なのか解説します。

GMAT/GRE

GMATかGREのスコア提出が必要です。

GMATの入学者の平均点は680-700点程度。これはアメリカのトップ校レベルと同等の数字です。GREについては公表されていません。

GMATで受験する学生が多いと思われます。しかしGMATとGREではGREの方が得意という方もいるかもしれません。

GMATで目標点が難しい場合はGRE受験を検討してもいいでしょう。

IELTS / TOEFL®

近年、ケンブリッジは出願の基準とする最低点を引き上げており、非ネイティブの英語でのコミュニケーション能力を重視する傾向にあります。

TOEFL iBT®/IELTS スコアは110/7.5以上が推定合格ラインであり、難易度は高いです。TOEIC®で950点あっても簡単に取得できる点数とはいえないでしょう。

英語のコミュニケーションに不自由がない、ほぼネィティブレベルの英語力が求められているといえます。

英語要件は、ハーバードやスタンフォードといったアメリカのトップ校と同レベルの最高難度です。

日本でケンブリッジMBAについてもっと詳しく知りたいなら?

ケンブリッジMBAを受験するにあたり、自分に合っているか事前に研究することは合格のカギとなります。

日本でケンブリッジMBAについて情報収集できるサイトをまとめました。

ケンブリッジ大学MBA公式サイト

英語にはなりますが、卒業生や在校生のケンブリッジMBAの体験についての生の声、またキャンパスの画像が参照できます。

入試要領等について最新の情報を得られるリソースとなりますので必ずチェックするようにしてください。

参考:ケンブリッジ大学MBA公式サイト

参考:Cambridge MBA Stories

ケンブリッジ大学MBA公式Facebook

出願期限のお知らせやライブチャットの案内も出ているのでフォローしておきましょう。

学校の雰囲気やカルチャーを知るために参照するにも良いサイトです。エッセイやインタビュー対策のヒントに活用できるのではないでしょうか。

参考:ケンブリッジ大学MBA公式Facebook

日本人合格体験記

ケンブリッジMBAの合格体験記です。個人のプロフィールや受験対策などが簡潔に書かれています。

参考:Cambridge MBA 合格体験記 – Interface (kkinterface.co.jp)

Cambridge MBA 日本人向け非公式サイト

「ケンブリッジMBAの特徴」で上述したフォーマルディナーの詳細や合格体験記も日本語で読むことができます。

また合格者のバックグラウンドやテストスコアが明記されており、受験する上でスコアメークの目標値の参考になります。

ケンブリッジ受験に興味のある方は一読をおすすめします。

参考:Cambridge MBA 日本人向け非公式サイト

まとめ

ケンブリッジMBAは、ハーバードやスタンフォードといったアメリカのトップ校と比較すると、知名度はアメリカトップ校より高くないことは否めません。

しかしながら、中世から続く伝統ある名門校において多様性のあるクラスで学ぶことは、キャリアを積む上でも米国や日本のMBAでは得難い経験を得ることができるでしょう。

テストスコア要件を見ると難関校のイメージですが、ケンブリッジが出願者に求める資質は点数や経歴のみではなく、人柄や価値観などを多面的に評価し「ケンブリッジの文化に合うか?ケンブリッジの指針に沿うキャリアを歩めるか?」といった視点が重視されるようです。

エッセイラィティング等を通じて、自分の価値観と将来の目標にしっかり向き合い、ケンブリッジMBA合格を掴みとってください

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この記事の執筆者

斉藤りか

慶応義塾大学経済学部卒業。外資IT企業に就職後、ボストン大学経営大学院修了(MBA取得)。

帰国後、ITベンチャーや米系ハイテク企業でマーケティング・ビジネス開発に従事。

その後、アメリカ大使館等各国大使館の商務官に転じ、海外企業向けのビジネスコンサルティングに携わる。